「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

「待つこと」にもっと寛容になろう

2022年11月14日 | 読書コーナー

             

著者の藤原智美さんは芥川賞受賞作家。

本書は「加速する一方の老人社会でいま何が起こりつつあるのか」について、老人特有の時間の観念、所在空間、やり場のない感情の処理の面からその本質を分析した実に興味ある内容だった。

構成については、「
序章 なぜ”新老人”は暴走するのか」に始まり、「第1章 時間」、「第2章 空間」、「第3章 感情」に分かれている。 

本書ではこのうち第1章「時間」に全体の半分ほどの頁数を割いてあり、
「分別があってしかるべき老人」がときに不可解な行動で周囲と摩擦を起こすあるいは暴力的な行動に走る。著者はこうした高齢者を「新老人」と呼ぶが、いったいなぜか。

暴走事例 1

身なりもよく品のいい老人が確定申告の長い順番待ちのあと、やっと自分の番になったところ係員の応対に突然怒鳴りだして周囲の空気を一瞬にして凍りつかせた。

暴走事例 2

病院の順番をめぐるトラブルで口の利き方が悪いというだけの理由で若い女医が胸ぐらをつかまれ顔を殴られた。

暴走事例 3

自動販売機の前で60歳の男がタバコを買おうとしていた。後ろには70歳の男が待っていたが、前の男の動きがのろく感じられたのだろう、70歳の男が「タバコを買うのが遅い」と文句をいった。言われたほうも言い返しケンカが始まった。結果は70歳の男が殴られて死亡(北海道函館市)

”いい歳をした”大人が公道で殴る蹴るの暴力をふるい合う、そんな光景は誰も見たくないはず。見ず知らずの者同士の偶発的なぶつかり合い、そして騒動の中心になる新老人。

この3つの暴走事例の共通となる原因は既にお気づきのとおり「待つこと」にある。

「待つこと」がなぜ、老人たちをこれほどまでに苛立たせるのか。

本書ではこの「待つこと」(41~61頁)について、新老人の心理を解剖するための象徴的な事例として重点的に取り上げ、次のとおり詳細に分析している。

1 「待つ」から「待たされる」感覚へのシフト

これまでも「待つこと」は嫌われる一面がたしかにあったが、逆に「待つ」時間があってこそ場合によっては幸福感、自分を取り戻す時間があることも事実。
しかし、近年あらゆるものがスピード化することにより「待つ喜び」が失われてきている。

たとえば、”もういくつ寝るとお正月”と待ち望む感覚、携帯電話の普及によって喫茶店の待ち合わせが激減し、待つ間の感情の揺れ動きが無くなったこと、あるいはメールが手紙を衰退させ時間をかけて返事を待つという気持ちのゆとりを失わせたことなど。

しかも、この従来とは違う生活スタイルが無意識のうちに中高年を戸惑せ、さらに不可解なことに、「待つこと」が加速度的に省かれてきているにもかかわらず私たちは「待つこと」のストレスから解放されず、むしろ「便利」になればなるほど「待つ」ことから「待たされる」感覚へとストレスが膨張していく。

2 変容する時間感覚

生物学者の柳澤嘉一郎氏は現実の時間表示と人間の体内時計とが一致しない説を提唱しており、端的にいうと高齢者の場合は酸素消費量の違いにより子供に比べて現実の時間が早く感じるとのこと。

身体の感覚が現実の時間に追いつかない、そのような焦燥感が、新老人の場合たまたま予期せぬ「待たされる時間」に遭遇すると、自分を見失うほどの怒りへと転化する。

3 現代の富とはモノではなく時間

時給、月給、年俸など収入が時間の単位で計算される現代社会では、時間のコントロールが最大のテーマであり、時間を私物化し、いかに自己中心的に組み立てられるか、それが権力に直接つながっている。

たとえば極端な話だが100万円をある人は半年間の労働で手に入れる、またある人はマウスのワンクリック、1秒で手に入れたとする。両者の問題点は手に入れた100万円ではなくて、明らかにそれを要するためにかかった時間にあり、結局のところ時間は「現代の富」を象徴している。

したがって、「待たされること」は自己への時間的侵略、時間的暴力とみなし、力関係における敗北感のもとで新老人たちの感情爆発が誘発されている。

以上のとおりだ
が、自分は1、2、3すべてに頷けるので、どうも暴走老人の潜在予備軍のような気がする。

たとえば、身近な例を挙げるとスーパーのレジなどで料金の精算に時間をかけたりしているのを見ると、思わずイライラして「何モタモタしてるんだ、早うせんかい!」と喚きたくなることがしばしば。

「待つこと」にもっと寛容にならなければ・・(笑)。



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秋の夜長に相応しい「TRIAXIOM」

2022年11月13日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

スピーカーの玉突き移動のおかげでようやく陽の目を見ることになったグッドマンの「AXIOM150マークⅡ」(口径30cm:同軸2ウェイ)。

「お前はやたらに口径30cmのユニットが好きだな」と思われる方が多いかもしれない。

その理由は「低音域の質感と量感のバランスが丁度いいから」に尽きる。もちろん好き好きなので「俺は口径38cmが好きだ」という方がいても少しも不思議ではない。各自の感性も含めてオーディオ環境もそれぞれですからね。

そして、苦も無く取り付けた姿がこれ。


高音域が少し物足りないので「スーパー3」(ワーフェデール:口径10cm)を付け足した。

能率が高いユニットなので駆動するアンプは小出力で十分、というか、こういう古典系ユニットはむしろパワーがありすぎるアンプの方が弊害が多いような気がいつもしている。

というわけで、小出力だがとても素性のいい音を出す「71A系」アンプの出番がやってきた。



左が「71A系2号機」でレイセオンの「83V」整流管を付けてから見違えるほど元気がよくなった。

「北国の真空管博士」によると、「この整流管だと電圧が10ボルトほど上がりますよ」とのことだが、ようやくこのアンプの出番がやってきた感じ。

これまで電源トランスのタップの制約のため、「この前段管(AC/HL)だと十分に71Aを駆動できませんがどうしようもありません」と改造者のNさん(大分市)から釘をさされていたのだが、この「10ボルトアップ」で息を吹き返してくれた。

まさに「起死回生」とはこのことか(笑)。

右側の「71A系1号機」(SRPP回路)は高音域の「スーパー3」を駆動するもので、調子に乗ってこのアンプにもRCAの「83V」整流管を付けている。

さあ~、ワクワクドキドキしながら音出し~。

その結果だが、(音質に対する)月並みな表現は止めておこう、ただ「さすがはグッドマン!」とだけ言っておく(笑)。

そしてスピーカーの玉突き移動はまだ続く。

アッテネータ―の修繕待ちの「TRIAXIOM」だが、いきなりウェストミンスターに容れる前に、小手調べで「AXIOM80」(オリジナル)が入っている箱に目を付けてみた。

「TRIAXIOM」用のバッフルは準備していたので苦も無く交換。



これが板厚1.5cmの自作の箱に容れた「TRIAXIOM」。

いつでもすぐに復帰できるようにバッフルが付いたままで保管することになった「AXIOM80」(オリジナル)。



そして「AXIOM80」と違って、背圧(逆相の音)を盛大に逃がす必要があるためにバッフルの下部を塞いでいた布テープをすべてはぎとった。

さあ、これまでとガラリと違って容積がたっぷりの箱に入った「TRIAXIOM」からどんな音が出てくるんだろうか・・。

駆動するアンプは、前述したようにこのところ絶好調の「71A系2号機」。

ワクワクしながら耳を傾けるとどうもしっくりこないなあ・・。言葉で表現するのは難しいが響きが多すぎて焦点がぼやける感じといえばいいのだろうか。

板厚1.5cmの箱だから(箱の)重量が少し足りないのかもしれないと重さ3kgのダンベルを天板の奥側に載せてみたところこれがものの見事に功を奏した(と思う)。

一気に音が締まってきてバランスが良くなった。これは素晴らしい!

こういう音を聴かされると音質の形容なんかどうでもいいような気がしてきて、ただ「ひたすら音楽に没入できる音」といったほうが正鵠を射ている感じ、かな。

で、実に久しぶりにブルッフの「スコットランド幻想曲」(ヴァイオリンはオイストラフ)を聴く気になった。



ウ~ン、いつもの就寝時間がとっくに過ぎているのにまったく眠くならないのはいったいどうしたことか!

まことに秋の夜長に相応しい「TRIAXIOM」。

もうこのままでもいいかもしれないなあ~(笑)。



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スピーカーの玉突き移動

2022年11月12日 | オーディオ談義

先日の試聴会(11月1日)から早くも10日あまり経った。

オーディオ大好き人間が6時間も密室で顔を突き合わせながら「品定め」をすると、それぞれの機器の癖や性能がかなり強い記憶となって残る。

中でも注目の的となったグッドマン社(英国)の「TRIAXIOM」(トライアキシオム)は至高の存在。



いまどき珍しい口径30cmの「同軸3ウェイ」ユニットで持ち主が言うのも何だがめったにオークションにも出ない逸品で、Sさんから「このユニットをウェストミンスター(箱)に入れて聴いてみたいですね」の一言がずっと脳裡に焼き付いている。

ヤル気になればあっさり片が付くのだが・・。

そもそも常識あるオーディオ愛好家なら名門「タンノイ」のスピーカーを改造するなんて「狂気の沙汰」だろうが、九州の片田舎に常識外れの人間がいるんですよねえ(笑)。

もともと口径38cmのユニットが内蔵されていたのだが、どうしても気に入らなくて思い切って放逐し、「スーパー12」(口径30cm:ワーフェデール)を付けているのだからもう「蛮勇」としか言いようがない。

ま、自分さえ良ければいい世界なんだから、許してほしい~(笑)。

とはいえ、ある読者から10年ほど前のことだったろうか「タンノイを冒涜する気か」と抗議のメールをいただいたことがある。

「何を書いても勝手でしょ、気に障るなら読まなければいいじゃないですか!」「いいや、読者が多いんだから責任を持て!」と堂々巡り~。

そのうち抗議がピタリと止まったが、諦めたのかそれとも息が止まったのか、少し寂しい気もするが(笑)。

それはさておき、こういう調子だから「TRIAXIOM」と入れ替えるのは「お茶の子さいさい」で、2時間もあれば可能だが、そこはそれやはり長年馴染んできた「スーパー12」も大いに気に入っているのでなかなか捨て難く微妙な心境にある。

ま、とりあえず準備だけはしておこうかと、いつもユニットの修理をお願いしているN県の「Y工房」にメールで問い合わせてみた。

「3年ほど前にグッドマンのトライアキシオムを修理していただいた別府市の「〇〇」と申します。このSPを今でも愛用していますが、高音域用のアッテネータ―が経年劣化のためざらつき気味です。交換しても可ですから、修理可能でしょうか?併せて見積額(ペア)はいかほどでしょうか?ご返事お待ちしてます。」

もしウェストミンスターに入れるとしたら、完璧な状態にしてからのことで、現在は製造から50年近く経っており、経年劣化のせいで高音域用のアッテネータ―が位置によってちょっとざらつき気味なのが気になっていた。

すると翌日になって返信があった。

「いつもご用命頂きましてありがとうございます。GOODMANS  TRIAXIOM アッテネーター接触不良修理、承ります。接触改善でペア¥1万円~¥2万円程度

交換が必要なほど酷い場合、適合するアッテネーターが有るか判らないので実機を診てからと成ります。アッテネーター単品が分離出来れば、その方が良いです。」

修理可能とのことでひと安心、まず一歩前進ということで、さっそくこの箱から「トライアキシオム」を外した。


 
マグネットの見かけは大きいがそれほど強力でもなくどちらかといえば軽めである。こういうユニットの方が低音域が「だらり」としており、言い換えると締りが無くて響きが豊かになるケースが多い。

もしかしてウェストミンスターの箱には量感たっぷりで「うってつけ」かもしれないなあ。

さてそれはさておき、これでいつでも送付できる状況が整ったので、とりあえず空いた箱にどのユニットを容れようかと、迷った末にこのところ「髀肉の嘆」をかこっていた「AXIOM150マークⅡ」(グッドマン)を容れてみることにした。

メチャ重い重量級のマグネットを持った、同じ口径30cmのユニットなので赤子の手をひねるようなもの、難なく取り付け完了。

ワクワクドキドキしながら聴いてみると、これが何とまあ~!

以下、続く。



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ブログは無事の便り

2022年11月11日 | 読書コーナー

活字中毒」という言葉をちょくちょく目にする。

お馴染みの「広辞苑」には残念なことに該当語の記載がないが、ネットには「本・雑誌・新聞などを読むのが好きで、何も読むものがないと“いらだつ”ような状態になること。また、そのような人をいう。」とある。

そういう意味では自分は立派な「活字中毒」患者である(笑)。

「音楽&オーディオ」で目が回るほど忙しいのに、手元に未読の本がないと何となく落ち着かない。そこで折をみて図書館に出かけ何がしかの本を仕入れてくる。

館内に入ると、まず「紙とインクの匂い」にホッとし、もしかして面白い本に出くわすかもしれないという期待感に胸を膨らませているが、それがピタリと的中したときはこの上ない喜びとなる。

つい最近読んだ中で一気呵成に読んだのが次の本だった。

☆ 「作家の履歴書」~21人の人気作家が語るプロになるための方法~(角川書店刊)。

                       

当代の人気作家たち21人について、それぞれ(作家への)「志望動機」「転機」「自分を作家にした経験」についてのコメントをまとめたものだが、まったく各人各様の勝手気ままな“来し方”の波乱万丈ぶりが面白かった。

とはいえ、これらの作家たちには共通点があって一つは小さい頃から並外れた「本の虫」だったこと。その読書量たるや凄まじいもので、これらは着実に本人の血となり肉となって後年の作品に反映し結実していったに相違ないと思わせる。

そしてもう一つの共通点は書いても書いても売れない長い不遇の時代をかこっていたこと。そして、めげずに続けていたら、ひょんなことで売れっ子作家になったというパターンが非常に多い。

結局、
最後にモノを言うのはやっぱり「根気」のようだが、それを裏打ちしているのは「読んだり書いたりすることが大好き」であることは間違いない。いわば「好きこそものの上手なれ」。

ちょっとニュアンスが違うかもしれないが、ふとオーディオ愛好家にも当てはまるのではないかと思った。

自宅で気に入った音で音楽を聴こうと思ったら並大抵の努力では間に合わない。誰もが羨むような豪勢なシステムにしたってポンと置いただけでは絶対にうまく鳴ってくれない。

これまでの50年近くになるオーディオ遍歴の中で、ときどき長続きしない愛好家を見受けることがあるが、そういう人たちはいずれも「音楽」ではなくて「音」を聞こうとする人たちだった。結局、この趣味も「音楽大好き人間」でないと根気が続かないようである。

「根気」のことでもう一つ。

つい先日、運動ジムで知り合いの方にばったり遭遇した。およそ3年ぶりくらいで懐かしかった。

自分の)心臓病の服薬のことでいろいろ親身になって心配してくれた方なので、「お久しぶりです!」と声をかけると「いつもブログを読んでますので、お元気なことは分かってました。内容が専門的過ぎてさっぱりわかりませんが・・・。」というお答えが返ってきた。

どうやら年賀状と同じでブログが「無事の便り」になっているらしい(笑)。

これまでいろんな方との出会いと疎遠を繰り返しているが
「元気にしてますよ」というシグナルを発信する意味で、改めて(ブログを)根気よく続けていこうと決意を新たにした次第。

そして、こういうありがたい読者がいるのでたまにはオーディオ以外のことも書かねばという気にさせられた結果がこの記事となる(笑)。


話は戻って、本書にはこれらの作家たちが「もっとも影響を受けた作家・作品」という項目があった。プロの作家たちをそこまで揺さぶったとなると、大いに興味を引かれたので忘れないように主な作家を抜粋して列挙しておくことにした。

〇 大沢 在昌 
レイモンド・チャンドラー「待っている」、生島治郎「男たちのブルース」。


〇 角田 光代
デビュー当時は「尾崎 翠」が好きで、28歳で開高健にものすごく影響を受けた。「輝ける闇」。


〇 北方 謙三
ギッシングの「ヘンリ・ライクロフトの私記」


〇 小池 真理子
三島由紀夫とカミュ。1冊あげるなら「異邦人」


〇 桜庭 一樹 
ガルシア=マルケスの「百年の孤独」。無人島に持っていくとしたら絶対コレ。


〇 椎名 誠
宮沢賢治が一番好き。「どんぐりと山猫」は暗唱できるくらい読んだ。


〇 朱川 湊人 
ブラッドベリ「10月はたそがれの国」


〇 白石 一文
カミュ「異邦人」繰り返し読んだので血肉化している。


〇 高野 和明
ブラッティ「エクソシスト」、宮部みゆき「魔術はささやく」「火車」


〇 辻村 深月
綾辻行人の「館」シリーズ


〇 誉田 哲也
夢枕 獏「上弦の月を食べる獅子」


以上、ほとんど読んだことのない本ばかり。

これは「好きな曲目」などの嗜好が一致するのが稀なのと同じですかね(笑)。



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「ゆでガエル」と真空管

2022年11月10日 | オーディオ談義

新刊「新失敗学」(畑村洋太郎)の中に次のような記述があった。(99頁)



「ゆでガエルという言葉があります。カエルはいきなり熱湯に入れると熱くてすぐに飛び出すものの、常温の水に入れて徐々に水温を上げていくと逃げ出すタイミングを失ってそのまま死んでしまうという寓話(ぐうわ)です」

つまり、「ぬるま湯に浸っていると危機が迫っているのに油断して変化に対応できない」というわけ。

真空管愛好家として身につまされる話ではなかろうか。

というのも毎日使っている真空管アンプの出力管や整流管の寿命が尽きかけて次第に音が劣化しているのに気付かないまま代えるタイミングを失っている状況を想像してほしい。

真空管は所詮は消耗品であり、どんなに気に入った真空管であろうと寿命がくるので、日頃からスぺアをコツコツと準備してきた。



我が家で保管している真空管(出力管、整流管など)の一部だが、ご覧のとおりすべて「縦置き」にしている。

STC、ムラード、GECなどイギリス系が圧倒的に多いが、これらを全部使い切ってから息を引き取りたいものだが、たぶん無理だろうなあ・・(笑)。

それはさておき、そもそも真空管の寿命ってどのくらいなんだろうか?

「盲目蛇に怖じず」で、言わせてもらうと球の種類やブランドでも違うので諸説あろうが、十把一からげに大まかに時間単位でいくと寿命を6000時間として幼年期が1000時間、壮年期が4000時間、老年期が1000時間といったところかな。

毎日5時間使ったとして1200日、およそ4年ぐらいの寿命になるわけだが意外に短い。

我が家では8台のアンプを日替わりメニューのように駆使しているが、球を保護する効果も脳裡の片隅にある。


さて、人間の場合は自分がどの年期に属するかは簡単そのものだが、真空管ともなるとはたしてどの時期に相当しているかこれを見分けるのが実に難しい。

新品を購入して使うのが理想だが評判のいい古典管ともなるとまず無理なので
やむなく中古市場で手に入れたものを使わざるを得ないが、そうすると履歴がわからないので見当がつかない。

これには実は苦い思い出があって3年ほど前のこと「STC」ブランドは長寿命だし、測定値付きの中古品「4274A」(整流管)をたしか8万円ぐらいでオークションで手に入れたものの使い初めて2年もしないうちにフィラメント切れでお釈迦に~。なけなしのお金をはたいたのにもうガックリ(笑)。


それはさておき、真空管が壮年期に当たるのならもちろんいいが、もし老年期に入ったとするといったいどのくらいで「姥捨て山」に行かせるか、その時期を常に意識せざるを得ないのが宿命だ。
      

いつぞやのこと古典管の泰山北斗「北国の真空管博士」に真空管の寿命のノウハウに関して伝授していただいたので紹介しておこう。

「まず真空管は頻繁にON-OFFを繰り返しますと著しく寿命を縮めます。真空管の寿命があとどれくらいあるのか推定するのは非常に難しいです。Hickok社のチューブテスタでライフテストを実施するのが最も簡便な方法でしょう。 

ライフテストはHickok社の特定のモデルのみで可能ですので機種の選定は重要です。ライフテストが可能な最も安価なモデルは533型と思います。現在私は533型を使用しています。 
 
539Cが最も有名な高級機種なのですが、完動品は〇〇万円以上します。WEタイプは更に高価で故障時のメンテナンス費用も相当にかかります。533型ですと本体〇万円に送料+メンテナンス費用くらいでしょうか。 
 
最も有名なチューブテスタTV-7はHickok社の設計ですが、ライフテストができないのが難点です。私はチューブテスタのコレクターでもあり、修理待ちのテスタが15台以上あります。
 
チューブテスタの修理作業は非常に時間と費用がかかりますので1年に1台程度のペースで修理しています。部品が手に入らず10年以上手付かずのチューブテスタもあります。」

ご教示ありがとうございました。

とはいえ、現実にはチューブテスタを持っていない人がほとんどだろうから、気になる方は真空管をまとめて専門家に郵送して測定してもらうのも一つの方法ですね。


ちなみに我が家では真空管アンプのスイッチのオン・オフは慎重にしており、1時間以上家を空けそうなときはオフ、それ以外のときはオンの状態にしている。

したがって、家の近くをウォーキングするときはスイッチを入れっぱなしだが、
これって夏の時期のエアコンと一緒ですね(笑)。


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顎が落ちるほど美味しい「紫いも」

2022年11月09日 | 独り言

去る2日(水)のことだった。

「ねえ、明日(3日=休日)運転手役を務めてくれない。」

行く先は県南部の宇目町(うめまち)というところで、別府から1時間半ぐらいはゆうにかかるところ。

「ああ、いいぞ~」

断るとどういう仕返しが待っているかわからないのですんなり応じた方が無難だろう(笑)。

当日は13時の面会の約束ということなので10時半に出発したところ、予想外に混んでなくてすいすいと快調に進んだ。

そこで、時間調整に立ち寄ったのが途中にある鄙びた町の「道の駅」。

田舎にしては大きな施設で駐車場も満杯だしお客さんも多かった。ぶらりと店内を回ったところなんと大好物の「紫いも」を発見!

子どものころから「さつまいも」が好きだが、とりわけ「紫いも」が大好きで、このところずっと阿蘇町(熊本)の生産業者から取り寄せていたのだが、1年ほど前に「紫いもは手間がかかりますので生産を中止します」という無情な通告があったのでがっくり、普通のさつまいもで我慢していたところだった。

ちなみに、朝食と夕食は「玄米ご飯」に、昼食は「さつまいも」というのが自分のパタ~ン。

で、喜び勇んでまとめて2週間分くらい購入したが、尽きかけたら再度行くかあるいは配送してもらうか検討しよう。

さらに、この紫いもの食し方だが、いつも電子レンジで熱していたのだが、つい先日のテレビ番組で「さつまいもの美味しい食べ方」を特集していたので録画してみた。

いろんな食べ方を紹介していたが、記憶に残ったのが次のようなやり方。

まず、キッチンペーパーで芋を包んで十分に濡らす、そのうえでラップでくるんで電子レンジで熱する。

6~7割方熱したところで、ペーパーとラップをほどいて今度はアルミホイルで包んでトースターで8分ほど焼く。

いわば「二段構え」というわけで美味しく食べようと思えば手間と時間を要するが、これは「いい音」を得るのと同じですね(笑)。

というわけで、さっそく昨日(8日)の昼に試したところ無事出来上がり~。



ホクホクして見るからに美味しそうですねえ!

ただし、高齢者は喉に詰まりやすいので、液体と一緒に流し込むのが肝心で、自分はいつも「トマトジュース」(100%)で流し込んでいる。

で、輪切りにしながら食べてみたところ電子レンジだけのときよりも一層風味が増して美味しいことこの上ない。

これはもう「顎が落ちそうな美味しさだなあ!」と、感嘆しきり。

ちなみに「紫いも」にもいろんな種類があるようだが、この芋は「パープルスイート」と表示してあった。

ネットでググってみると、

「おもに千葉県で栽培されている品種で、10月中旬から1月頃に旬を迎えます。紫芋にしては中が淡い色合いをしていますが、加熱すると深い色合いに変化します。

ほかの紫芋と比べると甘味が強く味がよいため、蒸したり焼いたりするだけでも、ほくほくとした食感が楽しめるのが特徴です。ペースト状にしてスイートポテトやモンブランにしても、美しい紫色を楽しめます。」

なお、この紫いもは「アントシアニン」というポリフェノール(植物の色素成分)が含まれている。

その効能とは、

「網膜や視神経、毛様体の血流を促す働きがあると考えられるそうです。 目の疲れや視力回復のほか、「目の老化現象」である老眼の予防など、様々な効果を持っています。」

そういえば、イギリスの空軍パイロットが視力の老化を防ぐためにアントシアニンが豊富なブドウを食していたと聞いたことがある。

眼と同様に「耳も良くなる」といいんだけどなあ・・(笑)。


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手が抜けない理由

2022年11月08日 | オーディオ談義

久しぶりに県外からのお客様を迎えて試聴会(11月1日)を行うと内外ともに刺激があって活況を呈してくる。

まず、外からでは「I」さん(東海地方)から次のようなメールが届いた。

「Sさんをお迎えしての試聴会、大変面白かったです。最初期のAXIOM80の試聴が無かったのですが、私の見落としでしょうか?あるいは何かトラブルでも?」

そこで、次のように返信。

「いやあ、ご慧眼恐れ入ります。よく気が付かれましたね! 当日は7系統のSPのうち6系統を聴いていただいて、残る「AXIOM80(最初期版)だけあえて外しましたが、理由はお客さまも同じく所有されているので、聴きなれない他のSPを優先したせいでした。しかし、今となっては箱が違うので当然音も変わるはず、聴いてもらえば良かったと臍(ほぞ)を噛んでいます。」

しかし、こういう細かいことに気が付かれる読者がいらっしゃるので(このブログの)「手が抜けない」理由のひとつですね(笑)。

さて、次は内なる変化を述べてみよう。

当日のこと「AXIOM80」の復刻版を聴いて異口同音に「素晴らしいヴァイオリンの音色ですが、これに低音域が付いてくると鬼に金棒なんですが・・」と叫んだのだが、記憶が鮮明なうちにと翌日になってチャレンジしてみた。



AXIOM80単体で低音域を充実させるのは無理なので他のユニットをサブウアーファーにしようという算段。

そこで「ニューゴールデン8」(口径20cm:英国リチャードアレン)をあてがってみた。

AXIOM80のスピードについていけるSPユニット(コーン型)はこの世ではまず見当たらないが、口径20cmのユニットなら比較的マシだろう。

ムンドルフ(ドイツ)の無抵抗コイル「8.4mh(ミリヘンリー)+6.8mh」を使い、100ヘルツ以下でローカット(-6db/oct)してみた。



駆動するアンプはサブウーファー用が「6AR6(6098)シングル(三極管接続)、そしてAXIOM80(復刻版)にはできるでけ豊かな肉感を持たせるために「71Aプッシュプル」(画像右)をあてがってみた。



ワクワクドキドキしながら音出ししてみると、「お~、なかなかいけるじゃないか!」(笑)。

オーケストラの本格的な弦のユニゾンを聴こうと思ったら、ウェストミンスター級のバックロードホーンの箱じゃないと無理だと思うが、その辺を割り切ってしまえばかなりの音楽ソースに対応できそう。

これで、しばらく「日々これ好日」の秋を楽しませてもらうとしよう。

もうオーディオ三昧の毎日が楽しくて楽しくてたまらん~(笑)。


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「丈夫さ」と「繊細さ」は両立しないのか

2022年11月07日 | 読書コーナー

天高く馬肥ゆる秋は「音楽&オーディオ」にもってこいの季節だが読書だって負けてはいない。

オーディオが面白すぎてなかなか読書に時間が割けないが(笑)、それでも未練たらしく「ながら読書」をしている。

☆ 「最高齢プロフェッショナルの教え」 

             

漫画家、パイロット、ギター職人など、「その道」を極めた最高齢のプロフェッショナルたち15名の人生哲学を収録した本だった。

最高齢というだけあって、年齢的にも最高が103歳、90歳代が5名、80歳代が7名と後期高齢者が大半を占めるが、さすがに、並外れた苦労を実際に積み重ねて来られた方々だけに、その人生観も浮ついたものがなくズシリと胸に響いてくるものがある。

いずれの方々ともに、若い頃に人生設計とかの細かい計算をせずに、ただ「無我夢中になって打ち込む」、「人との出会いを大切にする」、「破天荒とも思える冒険をする」、そして「結果なんて後からついてくる」という前向き思考が共通点だった。

また男性陣は年齢からして若い頃に「兵隊」にとられた方が多くて、あのときの理不尽な鍛われ方に比べると、どんな苦労だって”へっちゃら”という言い方が目に付いた。

こういう「たくましい」人たちの話に触れると「自分はマダマダ甘い」とツイ反省してしまう(笑)。
 

一番興味を惹かれたのは「ギター職人」の「矢入 一男」氏〔当時78歳)。

「ヤイリギター」の創設者で、これまでギターのブランドには疎くて「ギブソン」ぐらいしか知らなかったが、「ヤイリギター」は海外の著名人も使っているブランドと初めて知った。

コメントの中にこういう行(くだり)があった。

「そのへんの安いギターは丈夫な合板でできています。でもヤイリギターのもとになるのは、天然の木そのままの無垢材です。そうなると、いい音で鳴るギターを作る以前に、壊れないギターをつくることが問題になります。」

「壊れないということは丈夫だということだ。しかし、丈夫だということは、ギターがよく鳴らんということでもあります。そこで試行錯誤しなけりゃならない。いい音で鳴る繊細な”つくり”をしていて、しかも壊れないギターが目標です。」

ポイントは「丈夫さ」と「繊細さ」は基本的に両立しないことが当たり前のこととして実体験的に述べられていること。

楽器とスピーカーは似たようなものなので、これは何だかオーディオにも通じるような話ではなかろうか。

たとえば許容入力が大きくて、まるで工業製品みたいな頑丈なユニットからは大味な音しか出てこない。

したがって「丈夫さ」と「繊細な音」の両方が簡単に手に入ると考えるのは間違いで、このあたりは「オーディオの盲点」ではなかろうか、とさえ思う。

その点、我が家の「AXIOM80」は・・、なんて書き出すと「我田引水」となって読者から嫌われるだけなのでこれで打ち切り~(笑)。


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後悔先に立たず

2022年11月06日 | オーディオ談義

「後悔先に立たず」という言葉がある。

ご存知の方も多いと思うが念のため、「広辞苑」では「事が終わった後で悔いても、取り返しがつかない」とある。

つい先日の試聴会(11月1日)がまさにそれだった。

オーディオ愛好家にとって他人に自宅のシステムを聴いてもらうことは「晴れ舞台」のようなものだし、ましてや「いい音ですね!」と感心してもらうことはホンネかどうかは別にして(笑)、とてもうれしくなるものである。

しかし、いつものことだが終わった後で「シマッタ!」と思うことが必ず出てくる。今回もそうだった。

思いつくままに挙げてみよう。

★ 「PP5/400」アンプの切り替えスイッチのミス



画像中央部のやや左に「切り替えスイッチ」があるのにお気づきだろうか。

薄い緑色で「MH4、AC/HL・・」「71、12A・・」「MHL4・・」と真空管の「μ(ミュー)=増幅率」に応じて3段階に切り替えるようになっている。

今回は「AC/HL」を挿し込んでいたのでスイッチを一番上部にしなければならなかったのに、うっかりして正反対の一番下部にしたままだった。

気が付いたのは翌日のことで「しまったあ・・!」(笑)。

そういえば「PP5/400」アンプで聴いたときにやたらに音の重心が上がり気味だったなあ~。

4日(金)にお客様のSさんからご連絡があったので、その際に「切り替えスイッチのミス」を申し上げたところ「PP5/400の特徴はよく出ていましたよ」と慰めてくれた。

とはいえ、肝心の晴れ舞台でミスってしまって「後悔先に立たず」・・。

★ ツィーターの選択ミス

我が家には現在使用できる「ツィーター」(高音域専用)が3種類ある。

ジャズ向きのお客様には「シンバル」の響きが抜群の「075」(JBL)の出番だが、今回のお客様はクラシックファンだったのでコーン型ツィーターの出番となった。

これにはワーフェデール製(英国)を2種類持っていて、「スーパー3」(口径10cm)と、もう一つは型番不明だが「口径6cm」のツィーター。

当日使ったのは「スーパー3」の方で「とても音がいいツィーターですね!」と好評を博したのだが、念のため翌日になって「口径6cm」のものと入れ替えてみた。ほんの遊び心のつもりだった。



超強力なマグネットの持ち主で鉄製とあらばすぐに吸い寄せるほどの力持ち。



置台を工夫しながら無事セッティング完了。

ローカット(およそ8000ヘルツあたり)するコンデンサーは同じもの(ウェスタンのブラックタイプ)を使って音出ししたところ、アッと驚くほどの変わりよう。

こちらの方が能率が高いせいか切れ味が鋭くてシンバルの響きが「075」と対抗できるほどだし、ヴァイオリンの音色も「AXIOM80」に肉薄するほどの出来栄え。

しまった、これを使えば良かったなあ・・。

あ~あ、「後悔先に立たず」(笑)。

いつもこうなんだから~。

そして、4日(金)には待望の整流管「83V」(レイセオン製)が届いた。これを「71Aシングルアンプ」に挿し込んで聴いてみると・・。



これは凄い!

例によって「以下、続く」(笑)。



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魅惑の女流ヴァイオリニスト

2022年11月05日 | 音楽談義

オーディオ仲間との試聴会(11月1日)で改めて胸を打たれたのが「AXIOM80」で聴いたヴァイオリンの音色。

ヴァイオリンの再生周波数帯域は「180ヘルツ」あたりから「1万ヘルツ」以上だから、このSPの再生可能領域にどっぷり嵌っておりまさに「独壇場」ともいえる。

「ヴァイオリンを聴くためだけに、このSPがあってもいいですねえ」と、二人して異口同音に叫んだことだった。

水も滴るような艶やかで濡れたような響きで優しく包み込んでくれるヴァイオリンは母性的というか女性的な楽器のような気がしてくる。

そこで「見目麗しい美人」が弾けばいっそう興趣が増す感じ~、で、
ときどき、”オッ”と気をそそられる写真というのがある。

クラシック専門番組「クラシカジャパン」(CS放送)の8月号(2014年)の表紙がそれ。

                 

裏にパトリツィア・コパチンスカヤとあり1977年モルドヴァ生まれというから、当時で37歳? パッと見た瞬間に20歳前後だと思った(笑)。

初めて聞く名前だが「美しき次世代アーティストたち」とあるから、新進気鋭のヴァイオリストなのだろう。


モルドヴァといえば聞きなれない国名だが、ルーマニアとウクライナの間に位置する国で、このたびのウクライナ紛争で避難民が殺到している国といえば思い当たる方も多いだろう。

旧ロシア領というから画像でもお分かりのとおり、さぞや透きとおるような白い肌の持ち主なのだろう。


ヴァイオリンはその優雅な曲線美から女性が持つと絵になる楽器だと思っていたが、この写真を観て改めて納得。

年から年中「年増」と鼻を突き合わしていると一服の清涼剤として大いに目の保養になるのでときどき引っ張り出しては見入っている(笑)。

あっ、そういえば先日の読売新聞の「人生案内」(読者投稿)で「寡黙で優しい主人がパソコンで女性の水着姿にうっとりと見入っているのを見つけてガッカリしました」(趣旨)というのがあった。

思わず、ドキッとしたねえ。これから用心しないと・・、いい歳をして(笑)。


さて、過去の女流ヴァイオリニストといえば、いの一番にくるのが「ジネット・ヌヴー」だ。

1950年代前後に活躍したヴァイオリニストだが惜しくも飛行機事故で亡くなった。彼女の「ブラームスのヴァイオリン協奏曲」(イッセルシュテット指揮:ライブ))は絶品で、録音は悪いが大の愛聴盤。


         

以前、オーディオ仲間のお宅で聴かせてもらっていたところ、感動のあまり涙が溢れ出て困ったことがあった。人前で涙を流すのはみっともないからねえ(笑)。

もともと大のヴァイオリン好きだがブラームスのヴァイオリン協奏曲は特別で随分と収集したものだった。

現在手元にあるのは、シェリング、オイストラフ、マルツィ、ハイフェッツ、グリュミオー、ヴィトー、オークレール、コーガン、比較的新しいところでムター、レーピン、ハーンで次から次に聴きまくったが、結局ヌヴーを上回る演奏はなかった。

これからどれほどのアーチストが出てこようと、あの熱狂的な1948年3月5日(於ハンブルク)の運命の一夜の再現は不可能だろう。

その場限りを命として燃え尽きる燃焼型のアーチストが時代とともに消え去っていくのは淋しい限り~。



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大乱戦

2022年11月04日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

いよいよ試聴会も佳境に入って、本命候補のSP「トライアキシオム」をめぐる展開へと移っていった。

Sさんが持参された「6FD7」アンプ(左側)、そして我が家の「6AR6(6098)」との一騎打ち。

  

その結果は、

S(お客さん)「私は6FD7の方がスピード感があって好きです」

T(自分)「6AR6はスピードはやや落ちますが音にゆとりがあってスケール感もあるし長時間聴いても疲れない音ですよ」

オーディオ機器は己の家族のようなものだから身びいきしてお互いに譲らず~、まあ、いいでしょう、自分さえ良ければいい世界なんだから(笑)。

ここでささやかな「実験」を行った。

「6AR6」アンプの前段管のオリジナルの球は「6SL7」(STC)だが、我が家では「変換アダプター」を使って「12AX7」(BRIMAR)に差し替えている。

両方を差し替えながら「どちらがお好きですか?」との問いに対して、

「全体的な安定感は6SL7の方があります。12AX7は高音域にかけて繊細な表現力がありますが私は6SL7の方が好きです」

T「・・・」(笑)

以後も「リチャードアレン」「AXIOM80」(復刻版)「PL100」「スーパー10」(ワーフェデール)と入れ替えしながらアンプの方は「6FD7」と「6AR6」をメインにしながら展開。

「AXIOM80」の水も滴るようなヴァイオリンの音色に浸りつつ、これに低音が付いてくれれば言うことなしですがと二人ともため息が出た。

そして「PL100」の近代的な音にも感心されていた。

「こんなに小さな筐体なのに信じられないほどの低音が出ますね。小振りなだけに音像定位が抜群です。中央に音像がスッと立ち上がりますよ。」

T「小編成やボーカルなどには強みを発揮しますよ。オーケストラはどうでしょうか・・、ブルックナーを聴いてみましょうか」

「ブルックナーは大好きですが最近、チェリビダッケの指揮するリスボンライブ(8番)のレコードが発売されたので購入しましたよ。」

T「それはそれは・・、随分高かったでしょう。ブルーレイに収録していますのでさっそく聴いてみましょう。この曲は三楽章と四楽章がいいですね」

「やはりオーケストラの弦のユニゾンやスケール感となると、PL100では厳しいようですね・・」

T「こういう曲はウェストミンスターの独壇場でしょう」

で、再びスピーカーをウェストミンスターへ戻して試聴。

とまあ、こういう調子であっという間に時間が経っていく。

最後にSさんが述べられたことをアトランダムにメモしておこう。

★ 2A3シングルアンプはアンプのボリュームが全開のときと絞った時では音が様変わりしますよ。いっそのことボリュームを取ってしまった方がいいんじゃないですか・・。

★ それぞれにスピーカー、アンプともいいところがあってなかなか捨て難いですね。これだけの数があることに納得しました。この中で気に入ったのは「トライアキシオム」ですが、このユニットをウェストミンスターに容れて聴いてみたいですね。手間と時間がどのくらいかかるんですか。

T[いやあ、たいしたことないですよ。左右両方で2時間もあれば十分でしょう。ただ裏蓋のネジが18個もあって外すのが少し面倒ですが・・。しかし、世界中でも類を見ない組み合わせでしょうからチャレンジしてみる価値は大いにありそうですね。

ホンネを言わせてもらうと、ウェストミンスターにあなたの「モニター・シルヴァー」(口径38cm)を容れて鳴らしてみるのも面白そうですね。チャレンジしてみませんか」

「なかなか魅力的な提案ですね! しかし、こんな大きな図体のスピーカーを持ち込んだら家人から大目玉を食らいそうです。まあ、無理でしょうね~」

T「ハハハ・・」

余談になるが、ウェストミンスターが我が家にやってきてからもう30年ぐらい経つだろうか。いよいよ到着する前日になって渋々「実は・・」と家人に明かしたところ、激怒して1週間ほど口を聴いてもらえなかったことを思い出した。懐かしいなあ(笑)。

以降、中身のユニットも含めて自分好みに大幅に改造しており、まあ、「骨の髄」までしゃぶり尽したと言ってもいい「箱(エンクロージャー)」だが、この箱じゃないと出てくれない音があるのも事実で我が家のオーディオに多大の彩をもたらしてくれたので、今となっては大いに感謝している。

さて、話は戻って、お互いに音楽とオーディオの四方山話を繰り広げたが「16時に長男が迎えに来ます」とのことで、きっかり定時にお迎えが来た。

S「今日はたいへん楽しかったですよ」

T「それではまた~、新しいアンプの完成の暁には私の方から駆け付けますから。」

現在、Sさんは世界でも最高級の部品(出力及びインターステージトランスなど)をそろえた真空管アンプ(出力管は「PP5/400」)の製作を依頼されているとのこと。

部品代だけで軽く200万円オーヴァーだそうで、もう8割方出来上がった様子なので聴かせていただくのがメチャ楽しみ~。



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秋の好日に「ベスト・システム」を求めて

2022年11月03日 | オーディオ談義

11月1日(火)は遠路はるばるお見えになったSさん(福岡)と10時から16時まで6時間にわたってシステムをとっかえひっかえしながらみっちり聴き耽った。

二人ともクラシック好きがベースにあるので話がよく噛みあった気がする。

まずは音楽があり、そしてオーディオという順番だが、とはいえやや主客転倒気味なのもよく似ている(笑)。

さて、試聴会の模様をどういうふうに「まとめ」ようかとちょっと迷うがテストしたスピーカーをメインに据えて順番に記録として遺しておこう。

対話形式がわかりやすいと思うので、「S=お客さん」、「T=自分」としよう。

★ ウェストミンスター

1 「WE300Bシングル」アンプ

S「めったに聴けないほどの深々とした低音が出てますよ、バランスもいいです。やっぱり最後は箱に尽きますかねえ・・・」

T「整流管を83V(刻印)にしたらまったくの様変わりでした。このアンプはもうこれに限りますね。北国の真空管博士からレイセオン製など新たに3本追加して購入する予定です」。



2 「PP5/400シングル」アンプ

S「やっぱりこちらの音の方がWE300Bより好きです!中高音域が実にきめ細やかで雰囲気が素晴らしいです。前段管の「AC/HL」(英国マツダ:初期版)がよく手に入りましたねえ」。

T「ハイ、市内の真空管工房からようやく手に入れました。初期版はオークションではもう手に入らないと思います」



※ ご覧のとおり、左側の「AC/HL」と右側の「PP5/400」の管内上部のマイカが細長い長方形になっているのが初期版の特徴である。

S「PP5/400を数ペア保管していますが、初期版(2ペア)以外は音質がやや落ちるのでもはや無用の長物です」。

T「それでもPX25よりはマシでしょう。我が家のPP5/400がお釈迦になったらそのときは譲ってくださいね(笑)」

3 EL34プッシュプルアンプ

S「これは・・、中高音域が冴えないですね。低音専用に使うのが一番じゃないですか。クラシック鑑賞はやっぱりシングル形式に限るように思います」

T「パワーは30ワットぐらいあるので我が家では一番の力持ちですけどねえ。低音域の量感と制動力に不足はないのですが、中高音域となるとシングル形式の繊細さには敵わないようですね。」

次はスピーカーを代えて「トライアキシオム」の登場。事前からSさんが切望されていたスピーカーである。

★ トライアキシオム(グッドマン:同軸3ウェイ)

ここでSさんが持参された「6FD7」アンプの登場。テレビ用の球として特殊なつくりだが、丈夫さと音の良さでは引けを取らない優れものである。

ずっと昔のこと、このブログでも特集を組んだことをご記憶だろうか。ちなみに、このアンプに限っては「北国の真空管博士」の入魂の作品となる。



S「いやあ、驚きました。トライアキシオムを聴かせていただくのはK県以後これで2回目ですが、予想していた以上にいいです。とてもバランスがよくて私の大好きな音です。このままずっと聴いていたい気になります。こんな音を聴かせられたらもう皆さんビックリされると思いますよ。それからサブウーファーは不要です。前にたらした布も無い方がいいです。」

T「気に入っていただいて良かったです。それにしてもこのアンプとは相性が抜群ですね。こんなに小ぶりなのに・・・。」

ひとしきり絶賛の嵐のもとに、「それでは次のアンプを聴いてみましょうか」と提案。



これも「北国の真空管博士」の手が余すところなく入った「6AR6(6098)シングル」アンプ(三極管接続)。

さあ「6FD7」と「6AR6」の同じ「6族」同士の一騎打ちですよ・・(笑)。

以下、続く。



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JBLは逆相ですよ!

2022年11月02日 | オーディオ談義

生来の早寝早起きだが高年になるといっそう拍車がかかってくる。

だいたい19時~20時には就寝し早朝の2時~3時には目覚めて朝食(7時)まではブログ作業に没頭。

今朝(2日)も3時に起きてパソコンを立ちあげ、まずメールのチェック。

すると「JBLは逆相ですよ」のタイトルが目に入った。

あれっと、送り主に注目すると「LANケーブル」などでたいへんお世話になっている「T」(東海地方)さんだった。

これまで50年以上に亘るオーディオ騒動では足を向けて寝られない方が沢山いらっしゃるが、とりわけ東海と北国の方面は格別の存在となっている。

さらにTさんのブログをいつも拝読しているが、その工夫と熱心さにはいつも頭が下がるほどなので、そのTさんのアドバイスとあれば即実行の気分になる。

で、肝心の文面はこうである。

「ご存じだと思いますがJBLはプラス、マイナスが逆です、今一度、075の接続を逆に繋いで試して下さい。」

そうですか・・、正直言って「逆相」は盲点でした。

さっそく、「075」をウェストミンスターの上に載せてプラス線とマイナス線とを逆にし、再チャレンジ。

折角なのでローカットするコンデンサーを「2.2μF(マイクロファラッド)から「1.0μF」へと変更して、クロスオーヴァーを1万ヘルツ以上にした。ブランドはいずれも「ウェスタン」製。

「075」の能率は「110db」もあるのでこれでも十分いけるはずと踏んだ。


「075」を駆動するアンプは「71Aシングル」。



「075」の能率が高いのでボリュームの位置は「10」が満開のところ「6」の位置でトライ。

ウェストミンスターの方の駆動は「PP5/400シングル」。

これで愛聴している「エンヤ」を聴いてみると、あれ~っと驚いた。

あの「木に竹を接いだ」感じがしないのである(笑)。

Tさん、おかげさまで上手くいきました!

アドバイスに感謝です~。誌面を借りてお礼申し上げます。

さて、昨日(1日)は予定通りオーディオ仲間の「S」(福岡)さんが定刻通り10時きっかりにお見えになられた。

いやあ、お元気そうで・・、お久しぶりです!

2泊3日の家族旅行とのことで、すでに前日に到着されていたとのこと。

そして「10時」から「16時」まで、たっぷり6時間にわたってまことに密度の濃い試聴会となった。

6台の真空管アンプと6系統のスピーカーの入り乱れての壮絶な戦いの詳細は次回以降へ~。



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オーディオ愛好家のご来訪~2022・11・1~

2022年11月01日 | オーディオ談義

前回からの続きです。



過去のシンバルの鮮烈な響きが忘れられず、ツィーターに色気を出して「075」(JBL)に代えて聴いてみたところ、フルレンジとの折り合いが悪く惨敗だった。まるで木に竹を接いだような音(笑)。

ツィーターでこんなに音が変わるのかと思うほどの変わりようで、急いで元の「スーパー3」に戻した次第。

いろんな楽器の音色の差は「倍音」にあると聴かされてきたが、高音域は全体のサウンドを一変させるほどの力がありますね。ま、今更の話だけど・・(笑)。

さて、そうこうするうちに本日(1日)の10時ごろにお客様がお見えになる。仮にSさんとしておこう。長い東京勤務を終えられて、今は退職され福岡で悠々自適の毎日を過ごされている。

圧倒的な古き良きイギリスを愛されておられて、タンノイの古典型ユニットを愛聴されている。



タンノイ・コーナーヨークの中には希少な「モニター・シルヴァー」(口径38cm)が内蔵されている。横のスピーカーは「AXIOM80」である。

周知のとおりタンノイのユニットは「ブラック→シルヴァー→レッド→ゴールド→HPD→・・」と変遷を辿っているが、古くなればなるほど音がいいとされている。

また、アンプは「PP5/400シングル」アンプで、ヨーロッパの真空管アンプの大会でグランプリに輝いた由緒あるもの。メチャ重たくて一人で抱え上げるのはとうてい無理!



さて、我が家には数年ぶりのご来訪で、当時のシステムとはまったくの様変わりなのでどういうご感想を洩らされるか興味津々。

ところで、昨日の土壇場になっても「WE300Bシングル」アンプの調整に余念がなかった。


このアンプの弄れるところといえば整流管しかないが、8ピンタイプと4ピンタイプの両方のソケットが準備されていてとても便利がいい。

「274B」や「80」「GZ32」など比較的弱めの整流管を差し込みながら実験していたところ、ひときわメリハリが出てきて情報量が多かったのが「83V」(RCA:刻印の4ピンタイプ)だった。

たかが整流管で「こんなに音が変わるの!」と驚くほどの変わりようで、さっそく「北国の真空管博士」にご注進。

「以前、譲っていただいた83Vを300Bシングルに使ったところとてもいい塩梅ですよ。」

「そりゃ、そうでしょう。83Vは内部抵抗の低い整流管です。WE300Bも内部抵抗が低いので相性がいいはずです。定評のある274Bなんかよりずっといいですよ。83Vはポピュラーではないのでみんな知らないだけです。そもそも83Vはレイセオン製を始め・・・」

「そうですか、そんなに優れものだったのですか・・・」。

現在「83V」の刻印を2本ストックしているので安心して使える~(笑)。



というわけで、Sさんを迎え撃つトップバッターは「WE300Bシングル」アンプで決まり~(笑)。

さあ、舞台は整った!

これから「PP5/400」 VS 「WE300B」、いわば「イギリスとアメリカ」の死力を尽くした戦いが始まりますぞ~。

以下、続く。


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