面白かったのだけど、とにかく読了に時間がかかった。
松本清張の古代史への執念が漲っている一冊。現地に足を運んでの取材力や自身の史観に向ける資料読みの強靱さ。また、学界などの権威に対する堅固な反骨精神が溢れている。イランと日本を交互に描き出していく展開や、象徴的に出来事を重ね合わせる手際に、小説家としての技量が冴える。
一方で、イラン取材によって作者自身が体験したことがらが文章となって伝わってくる。作者が好奇心に導かれるように苛酷なイランの地を彷徨っている様子が、小説の枠からはみ出すように、読者に伝わってくるのだ。
さらに、ヒロイン高須通子が書いた論文の形で、松本清張が語る古代史への仮説は、これもまた、小説の形を借りながら、それを越えて松本清張の挑戦状のような迫力を持っている。小説家が小説という武器で突きつけてきた古代史への問いと挑戦。飛鳥とペルシャを繋ぐ壮大な人々の交流が頭に浮かんでくる。ゾロアスター教を飛鳥の謎の石像群と結びつけていく発想は、今ではかなり受け入れられたものになっているのかもしれないが、斉明天皇とゾロアスターの結びつきなどにある想像力の冒険はなんとも魅力的だ。しかも伝奇小説ではない。これは歴史の正史の中にある想像力なのだ。
それにしても、文それぞれは簡潔だが、それが文章となってきたときに現れる、松本清張の執拗さ。これは、そう、まったく犯人を追う刑事のようだ。さらに、読者を疑問と解答へと誘導していく文の運びは、推理小説家としての松本清張のすぐれた才能なのだと思う。
生誕100周年。この人も巨大な知性を持った小説家だ。
松本清張の古代史への執念が漲っている一冊。現地に足を運んでの取材力や自身の史観に向ける資料読みの強靱さ。また、学界などの権威に対する堅固な反骨精神が溢れている。イランと日本を交互に描き出していく展開や、象徴的に出来事を重ね合わせる手際に、小説家としての技量が冴える。
一方で、イラン取材によって作者自身が体験したことがらが文章となって伝わってくる。作者が好奇心に導かれるように苛酷なイランの地を彷徨っている様子が、小説の枠からはみ出すように、読者に伝わってくるのだ。
さらに、ヒロイン高須通子が書いた論文の形で、松本清張が語る古代史への仮説は、これもまた、小説の形を借りながら、それを越えて松本清張の挑戦状のような迫力を持っている。小説家が小説という武器で突きつけてきた古代史への問いと挑戦。飛鳥とペルシャを繋ぐ壮大な人々の交流が頭に浮かんでくる。ゾロアスター教を飛鳥の謎の石像群と結びつけていく発想は、今ではかなり受け入れられたものになっているのかもしれないが、斉明天皇とゾロアスターの結びつきなどにある想像力の冒険はなんとも魅力的だ。しかも伝奇小説ではない。これは歴史の正史の中にある想像力なのだ。
それにしても、文それぞれは簡潔だが、それが文章となってきたときに現れる、松本清張の執拗さ。これは、そう、まったく犯人を追う刑事のようだ。さらに、読者を疑問と解答へと誘導していく文の運びは、推理小説家としての松本清張のすぐれた才能なのだと思う。
生誕100周年。この人も巨大な知性を持った小説家だ。