国内のエンタメ小説を読んだのは久しぶりかも。
面白かった。一気読み必至。
昭和が終わったとき、東ドイツ(DDR)に音楽留学したピアニストの眞山柊史。
昭和の終わりは1989年。それはベルリンの壁崩壊の年であり、一気に東ヨーロッパが開放(解放)
されていく年だった。
バッハに憧れてドレスデンに渡った主人公が、革命前夜の街で成長していく様子が、
東ドイツの歴史(現代史)と重ねて描き出される。音を求める柊史と、音と共に自由を求める東ドイツの人々。
そこに介入する監視の目、政治の強制。その中で彼は、音に、そして音を奏でる思いに出会っていく。
終盤は特に感情が入り込んでいった。
「君たちが自由な言葉を封じても、音楽をこの国から消すことはできなかった。
そして本物の音楽は必ず、人々の中に眠る言葉をよみがえらせる」
ストーリー展開も面白いが、音を、演奏を、言葉にしていく描写が楽しかった。
バッハ、ラフマニノフ、ショパン、リスト、ラインベルガー、メンデルスゾーン。フォーレ、
そして小説でのオリジナルの曲が演奏されるときの音の描写がいい。以前読んだ中山七里もよかったけれど。
小説の登場人物たちの演奏を聴きたくなった。