パオと高床

あこがれの移動と定住

ソウル観光(2)北村韓屋村

2009-05-13 11:20:16 | 旅行
NHKの「世界ふれあい街歩き」という番組が好きだ。その中でソウルの「北村」という昔ながらの街並みが放送された。
瓦屋根とレンガ塀の街並みだ。
場所はソウルの繁華街から近く、有名な仁寺洞を抜けて北につながる、なだらかな丘陵を上っていくところ。景福宮と昌徳宮の間になる。この一帯は朝鮮王朝時代の宮中の関係者が住んでいた場所だ。ついでといっては何だが、「冬のソナタ」の中央高校も近い。
今回の旅行の目的の一つが、この街歩きだった。

まず腹ごしらえ。店は「北村カルククス」。ここのククスはあっさりしているのに味が深い。量も多い。それとマンドゥ。これも、どちらかというとあっさり味で、肉ッぽさは少ない。一個が大きい。ちょうど食べ終わった頃お昼時になったのだが、たくさんの車が横付けにされて、ビジネスマンがぞくぞく入店していた。

その後、外周をなぞるように三清洞というおしゃれなレストランやブティックの並ぶ通りを北上する。この通りは、やたらカメラを持った韓国のカップルが多く、店を撮っている。中には素人のモデルを立たせて撮っている人もいる。何かの写真公募があっているのだろうか?
ある程度北上したあと、南下しながら、東側の韓屋の路地に入って、「北村文化センター」をめざす。北村の韓屋群は嘉会洞路という大きな路をはさんで東側の一画と西側の一画に拡がっている。まず、東側をクリアした。そして、文化センターでトイレに行って(ここのトイレはきれい)、地図を手に入れる。
この地図はすぐれものだ。旅行ガイドブックでは路地の詳細はわからないが、この地図はモデルコース共々、路地の詳細が描き込まれている。さらにフォトスポット8カ所、建物名称、韓屋か非韓屋かの区別まで明記されている。その地図を持って、西側一画に入る。足下にも注意が必要だ。フォトスポットでは路面にパネルが植え込まれているからだ。そこに立って辺りを見ると、あの番組の世界が広がる。瓦屋根、レンガ塀、オンドルの排気塔、雲型紋、頑丈そうな門扉。小高いところから南側を見れば、その韓屋の一画の遠景に、高層ビルが建ち並んでいるのが見える。時間の流れが違うみたいだ。さらに別の方角に目を移すと、景福宮の建物がある。韓国のカップルのデートスポットにもなっているようであり、またグループで街並みを楽しんでいる学生たちもいた。もちろん、僕たちのような観光客も。ただ、騒がしくない。路地を歩いていて、すれ違うといった感じだ。そう、ここで暮らす人たちもいる。

とても、ゆったりとした時間を過ごすことができる場所だった。

松本清張『火の路』(文春文庫)

2009-05-10 19:53:06 | 国内・小説
面白かったのだけど、とにかく読了に時間がかかった。
松本清張の古代史への執念が漲っている一冊。現地に足を運んでの取材力や自身の史観に向ける資料読みの強靱さ。また、学界などの権威に対する堅固な反骨精神が溢れている。イランと日本を交互に描き出していく展開や、象徴的に出来事を重ね合わせる手際に、小説家としての技量が冴える。
一方で、イラン取材によって作者自身が体験したことがらが文章となって伝わってくる。作者が好奇心に導かれるように苛酷なイランの地を彷徨っている様子が、小説の枠からはみ出すように、読者に伝わってくるのだ。
さらに、ヒロイン高須通子が書いた論文の形で、松本清張が語る古代史への仮説は、これもまた、小説の形を借りながら、それを越えて松本清張の挑戦状のような迫力を持っている。小説家が小説という武器で突きつけてきた古代史への問いと挑戦。飛鳥とペルシャを繋ぐ壮大な人々の交流が頭に浮かんでくる。ゾロアスター教を飛鳥の謎の石像群と結びつけていく発想は、今ではかなり受け入れられたものになっているのかもしれないが、斉明天皇とゾロアスターの結びつきなどにある想像力の冒険はなんとも魅力的だ。しかも伝奇小説ではない。これは歴史の正史の中にある想像力なのだ。

それにしても、文それぞれは簡潔だが、それが文章となってきたときに現れる、松本清張の執拗さ。これは、そう、まったく犯人を追う刑事のようだ。さらに、読者を疑問と解答へと誘導していく文の運びは、推理小説家としての松本清張のすぐれた才能なのだと思う。

生誕100周年。この人も巨大な知性を持った小説家だ。

ソウル観光(1)

2009-05-09 21:21:40 | 旅行
5月2日(土)から5日(火)で、ソウルに行った。
コリアレール・アンド・ビートルで、高速船とKTXを使ってのソウル。穏やかな玄界灘。快適な船旅。
韓国は2年前にソウルと春川に行って以来で、最近にしては期間が空いての訪問だった。ソウル駅に着いたのが4時過ぎ。地下鉄への乗り換えで、外に出ると、往来できる分だけスペースを開けて察官がびっしり整列していた。ロッテマートの入り口前の広場辺りからだ。いわゆる「蝋燭デモ一周年」だというのを知ったのは、ホテルでニュースを見てから。スーツケースを押しながら、体格のいい警察官の間を地下鉄の駅に向かって歩く。国家と国民の関係を繋ぐレアな感覚が、ほんのわずかだが、空気の中にあったような気がした。

ホテルでチェックインしたあと、近くの「南山コル韓屋村」という場所に行くと、土曜日の夕方ということで打楽器演奏のステージがあっていた。コリアン・ビートの強さ。四拍子だと思うんだけど、あのビートについていくのは難しいかも。