連日同じことばかり書いていますが、今日も暑くなりました。これはもう、これからしばらくは収まることはないのだろうと、殆ど諦めております…。
ところで、以前目覚ましに吹奏楽の名曲《アルヴァマー序曲》を使っているということを書きましたが、最近曲を替えました。現在、目覚ましに使っているのは《フェスティバル・ヴァリエーション》です。
《フェスティバル・ヴァリエーション》は
クロード・トーマス・スミス(1932〜1987)作曲の吹奏楽作品です。吹奏楽界隈では言わずと知れた名曲であり、また難曲としても名高い曲です。
この曲はワシントン・アメリカ空軍軍楽隊と、その指揮者のアーノルド・ガブリエル隊長の委嘱により1982年に作曲され、米国音楽教育者音楽会議とテキサス音楽教育者協会の75周年を記念した合同大会において初演されました。ガブリエル隊長は
「《フェスティバル・ヴァリエーション》は、間違いなく20世紀における記念碑的な(吹奏楽)作品の1つとして位置づけられることになるだろう。」
という賛辞をスコアに記していて、実際に今日においても、この作品はそうした位置づけとなっています。
全体的に難易度の高い曲ですが、中でもホルンパートは特に難易度が高く、過酷なものとなっています。この背景には、当時のアメリカ空軍軍楽隊の首席ホルン奏者であったジョニー・ウッディー最先任上級曹長がホルン奏者でもあった作曲者スミスの大学時代のライバルであったため難しく書いた…という、後の世代のホルン奏者にとっては迷惑極まりない逸話が残されています(汗)。
またこの曲は軍楽隊の編成に合わせたため、吹奏楽では珍しいチェロパートが存在しています。
スコアの最下段にチェロパートが書かれていますが、ファゴットやバリトン・サックスといった低音部パートと被っているところが大半なので、悲しいかな殆ど聴こえません(涙)。
この曲が演奏される際に、起きがちなことがあります。まだ曲が終わっていないのに、途中で観客が拍手してしまうことがあるのです。
この曲の中間部ではそれまでよりテンポが落ち着いて、ホルンのセンチメンタルなメロディが奏されます。そこから様々な楽器のソロが出てきて、やがてそれらが発展しながら膨らんでいき、
全奏による力強いフォルテで結ばれます。
この部分があまりにも立派なために、この曲を知らない観客が終わったと勘違いして拍手をしてしまうことがあります。しかし、このフォルテの結びの直後に
コントラバス・クラリネットという超レア楽器のソロがあるのですが、その折角のソロを拍手に阻まれることが少なくないのです。
それにしても、終わったと見せかけておいてこんなところにレア楽器をわざわざ登場させることといい、ライバルのいるホルンに当てつけのように超ムズパッセージを連発させることといい、この曲にはスミスの性格の良さが滲み出ているような気がしてしまうのは私だけではないと思います。しかし、そんなことには少しも頓着することなく、その後この曲は華々しい真のエンディングを迎えて力強く終わります。
そんなわけで、今日は吹奏楽の名曲《フェスティバル・ヴァリエーション》をお聴きいただきたいと思います。初演を手がけたワシントン・アメリカ空軍軍楽隊によるライブ録音で、吹奏楽屈指の名曲&難曲をお楽しみください。