9月に入って1週間が過ぎましたが、まだまだ日中は暑い日が続いています。こう暑いと、そろそろ『残暑』という日本語が死語になりそうです…。
ところで、今日は『重陽の節句』ですが、それとは違う話をしようと思います。今日9月9日は、
エリック・サティの処女作 《アレグロ》が作曲された日です。
『音楽界の異端児』と呼ばれる一方で、作曲家としては『現代音楽のルーツ』とも称されているサティは、後世に多大な影響を及ぼしました。同世代の音楽家であるドビュッシーやラヴェルたちも
「現代の多くの作曲技法はサティによって決定づけられたものだ」
と公言しています。
パリ音楽院の学生時代のサティは、『学校始まって以来の怠惰な生徒』という最低の評価でした。優等生ではなく落第生というレッテルを貼られていたサティでしたが、その後『音楽界の異端児』と呼ばれる所以を発揮することになります。
西洋音楽の常識だった調性音楽、いわゆる『ドレミファソラシド』のあり方に問題意識を持っていたサティは、当時、入り浸っていた教会の影響もあって、自作に教会旋法を取り入れるようになりました。グレゴリオ聖歌に代表される厳かで不安定な印象を与える教会旋法に魅了されたサティは、それまでの伝統を無視し、タブーとされていた不協和音をも取り入れ、既存の音楽の概念を壊していきました。
また、それまで意識的に聴く『鑑賞用』として作られてきた音楽を、意識的に聴かれることなく生活に溶け込む音楽として『家具の音楽』と称する曲を多数発表することとなりました。1888年に発表した《3つのジムノペディ》に代表されるような、主役にはならず、まるで家具のように日常生活を妨げない音楽を作っていったのです。
そんなサティの処女作である《アレグロ》は、
このたった9小節のピアノ作品です。これを作曲家の処女作として提出されたら
「ふざけてるのか!」
と怒られるか呆れられるかでしょうが、よく聴くと、この9小節の中に後のサティ作品を匂わせる要素が詰まっていることに気づかされます。
そんなわけで今日はサティの処女作《アレグロ》を、フランス・リヨン出身のピアニストのジャン=イヴ・ティボーデの演奏でお聴きいただきたいと思います。20秒ほどで終わってしまうので、くれぐれも油断なさらないようお気をつけください(笑)。