今日は本来の成人の日です。ただ、ハッピーマンデー制度のおかげでそんなことはすっかり忘れ去られ、今では誰も覚えてはいないでしょう。
ところで、今日1月15日はチャイコフスキーのバレエ《眠れる森の美女》が初演された日です。
チャイコフスキーの3大バレエのひとつとして有名なこの作品は、1890年の1月15日にサンクトペテルブルクのマリインスキー劇場で初演されました。
当時のマリインスキー劇場の支配人だったイワン・フォセヴォロシスキーはチャイコフスキーに、シャルル・ペローの昔話『眠れる森の美女』に基づくバレエ音楽の作曲を依頼する手紙を書きました。かつては外交官としてパリに駐在していたこともあり、フランス文化を愛好する文化的見識が深い人物だったフォセヴォロシスキーにとって、当時フランスで最も人気の高い演目として上演されていた『眠れる森の美女』は、自身が支配人を務める劇場で是非とも採り上げたかった魅力的な題材だったのでしょう。
当時のロシアでは、1881年に起きた皇帝暗殺事件以降、ロシア皇帝による専制政治がが強化されていました。そのような情勢の中でフォセヴォロジスキーは原作者シャルル・ペローが生きたルイ14世時代のフランスと当代のロシアを重ね合わせることによって、皇帝を賛美するための豪華絢爛なバレエを上演しようとしたとも言われています。
バレエの振付は、マリインスキー劇場の首席バレエマスターだったマリウス・プティパが担当することになりました。作曲は1888年の秋から開始され、途中に何度か中断を挟みながらも翌1889年の夏には全曲が完成し、1890年のこの日に初演の運びとなりました。
ストーリーについてはディズニー映画にもなっている作品ですから、ここで改めてあれこれ書くこともないでしょう。チャイコフスキーの《眠れる森の美女》には様々な見どころがありますが、私が個人的に好きなのが『バラのアダージョ』と呼ばれる場面です。
『バラのアダージョ』は、成人したオーロラ姫が結婚の申し込みをしに来た各国の王子様たちからバラを受け取りながら踊る華やかな場面です。このバレエでも屈指の華やかな場面でのオーロラ姫は難易度の高いテクニカルな踊りが要求され、それだけに見応えのあるものとなっています。
そんなわけで《眠れる森の美女》初演の日である今日は、初演されたマリインスキー劇場で2015年に上演された舞台での『バラのアダージョ』の動画を転載してみました。ワレリー・ゲルギエフの指揮による演奏、アリーナ・ソーモワのオーロラ姫での公演をお楽しみください。