最近の暖かな陽気と比べると、今日はまた冷え込みの強い一日となりました。やはり衣替えをするには早いようで、うっかり上着も仕舞えません。
ところで、今日3月4日はヴィヴァルディの誕生日です。
アントニオ・ヴィヴァルディ(1678〜1741)の一番有名な肖像画は、ボローニャの市立音楽院の図書館にあるこの赤い服を着てヴァイオリンを手にした作者不明のものだと思いますが、これは実際にはヴィヴァルディを描いたものではないといわれています。
ヴィヴァルディには他にも肖像画が伝えられていて、
この肖像画はヴィヴァルディ自身がオランダの画家フランソワ・モレロン・ラ・カーヴに1725年に描かせたものです。これは、あの《四季》をはじめとしたヴァイオリン協奏曲集《和声と創意の試み》をオランダのアムステルダムで出版した際に楽譜の販売促進のプロモーションのために描かれたもので、ヴィヴァルディの注文で本人よりもイケメンに描かれているようです(笑)。
一方、
これはちょうどヴィヴァルディがローマで自作のオペラを3作品上演した時にピエール・レオーネ・ゲッツィが描いたカリカチュア(風刺画)で、
『赤毛の司祭(ヴィヴァルディのあだ名)、1723年にカプラーニカ劇場における上演オペラの作曲家』
というゲッツィ自身の添え書きがあります。先程のイケメンプロモーション画像に対して、ゲッツィのカリカチュアは若干の悪意を感じるくらいに顔のパーツが誇張されている感があります。
司祭として教会に従事し、捨子養育院ピエタの教師でもあったヴィヴァルディは、施設の運営資金集めを兼ねた慈善演奏会で子どもたちに演奏させるために多くの作品を作曲しました。その代表作が《調和の霊感》と題された全12曲のヴァイオリン協奏曲集です。
司祭として教会に従事し、捨子養育院ピエタの教師でもあったヴィヴァルディは、施設の運営資金集めを兼ねた慈善演奏会で子どもたちに演奏させるために多くの作品を作曲しました。その代表作が《調和の霊感》と題された全12曲のヴァイオリン協奏曲集です。
この中には、ヴァイオリン教則本の必須アイテムである第6番イ短調や、バッハが《4台のチェンバロのための協奏曲イ短調》に編曲した第10番ロ短調といった名品があります。そんな中で個人的に好きなのが、合奏協奏曲の色合いが濃い第11番ニ短調です。
いわゆるソロ協奏曲を多く作曲したヴィヴァルディですが、この第11番はヴィヴァルディにしてはどちらかというと古いスタイルで書かれています。特にアレグロの部分では4声部のフーガ(正確にいうとフーガよりもちょっとライトなフガート)が展開されていて、イタリア音楽というよりもドイツ音楽のような厳格さが垣間見えるのも魅力のひとつです。
かつてバッハはイタリア音楽を学ぶために、ヴィヴァルディやマルチェッロといった様々な作曲家の協奏曲をオルガンやチェンバロ独奏用に編曲しました。その中で、この第11番もバッハによって《オルガン協奏曲ニ短調BWV596》に編曲されました。
そんなわけで、ヴィヴァルディの誕生日である今日は《調和の霊感》の中の名作である第11番ニ短調の合奏協奏曲を載せてみました。バッハも魅了されたヴィヴァルディの、華やかな中にも厳格さを秘めた世界観をお楽しみください。