共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

今日は《椿姫》の初演日〜レナータ・スコット&ホセ・カレーラスによる『乾杯の歌』

2022年03月06日 15時15分35秒 | 音楽
春一番の吹いた昨日と比べると、今日はまた冷え込みの強い一日となりました。春の到来を喜ぶのは、やはりまだ早いようです。

ところで、今日3月6日は



ヴェルディの代表作である歌劇《椿姫》が1853年に初演された日です。オペラの本来のタイトルは《ラ・トラヴィアータ=道を踏み外した女》ですが、日本では専らアレクサンドル・デュマ・フィス(1824〜1895)の原作小説である《椿姫(椿の花の貴婦人)》のタイトルで上演されています。

1852年にパリに滞在していたヴェルディはデュマ・フィスの戯曲版《椿姫》を観て感動し、当時新作の依頼を受けていたヴェネツィアのラ・フェニーチェ劇場のために、この戯曲に基づいた全3幕から成るオペラを作曲しました。《椿姫》の台本は《リゴレット》も手掛けた名パートナーのフランチェスコ・マリア・ピアーヴェ(1810〜1876)が書き、1853年の始めにかなりの短期間で仕上げられました



上の写真は、初演当時にラ・フェニーチェ劇場に掲げられた公演案内です。ただ、今では名作とされている《椿姫》も、初演当初の評価は実はかなり厳しいものでした。

先ず、娼婦を主役にした作品ということで道徳的な観点から当局に問題視されていましたが、ヒロインのヴィオレッタが最後に死ぬというストーリーにしたことで上演を許されたといわれています。そしてラ・フェニーチェ劇場で行われた初演は、完成から上演までの準備不足や、肺病で死にそうなはずのヴィオレッタをかなり恰幅のいいビジュアルの歌手が歌ったこともあって聴衆や批評家たちから痛烈なブーイングを浴びてしまい、歴史的な大失敗となってしまいました(因みにこの《椿姫》と、プッチーニの《蝶々夫人》、ビゼーの《カルメン》は『世界三大初演時大失敗オペラ』という不名誉なタイトルがつけられてしまっています)。

この失敗を受けて翌年に同地で再演した際には入念なリハーサルを重ねて、結果として聴衆たちに広く受け入れられることとなりました。その後も上演を重ねる度に人気を呼んで、現在ではヴェルディオペラの代表作といわれるだけでなく、全てのオペラの中で最も上演回数の多い作品のひとつとなっています。

《椿姫》は長編の原作から要領よく主要なエピソードを取り上げていて、聴きどころに富んだ構成となっています。悲劇のストーリーの中にも華やかな社交界の場面での音楽的な華やかさや力強さを失わないところにヴェルディの特質が最もよく発揮されていて、そうしたところも人気の源泉となっています。

《椿姫》には『ああそは彼の人か〜花から花へ』『プロヴァンスの海と陸を』『パリを離れて』といった様々な名旋律がありますが、何と言っても有名なのは『乾杯の歌』でしょう。これは第1幕でヴィオレッタが主催する夜会でアルフレード・ジェルモンと初めて会った場面でアルフレードが即興で歌った詩にヴィオレッタがその場で応えるというものですが、当時のサロンの文化的素養の高さを窺い知ることができる華やかな場面となっています。

そんなわけで、《椿姫》の初演日である今日はその『乾杯の歌』をお楽しみいただきたいと思います。1973年に上演された舞台での、レナータ・スコットのヴィオレッタとホセ・カレーラスのアルフレードの歌唱を御堪能ください。





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