共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

いつの間にか始まっていたパリ五輪〜モーツァルト《交響曲第31番ニ長調『パリ』》

2024年07月29日 17時25分55秒 | 音楽
連日暑い日が続いていますが、厚木市は今日も午後から猛暑日となりました。こんな日が続くと、何だか頭が一日中ぼ〜…っとしてきます。

ところで、気づけば知らない間にパリオリンピックが開幕していて、日本人選手の活躍が知らされるようになってきました。ちゃんと観たい気もするのですが、何しろ夜明け方に開催されているオリンピックをリアルタイムで視聴するほどの気力と体力がありません…。

個人的に印象深いのは、



男子柔道の阿部一二三の五輪二連覇です。準々決勝で鼻血を出してしまって

『あわや、相手の棄権勝ちか?』
(国際柔道連盟の規定では、試合中の出血を伴う同じ部位の負傷は医師による手当てを2回まで受けることができる。同じ部位の3回目の出血の時点で、主審は選手の安全のために試合を終了し、相手に「Kiken-gathi(棄権勝ち)」を与える場合がある。)

と思われましたが、しっかりと一本勝ちを決めた姿は素晴らしいものでした。

そして、



フェンシング個人エペ出場の加納虹輝が決勝で地元フランスのヤニック・ボレルを破ってフェンシング個人種目では日本勢史上初となる金メダルを獲得しました。フェンシングにはエペ・フルーレ・サーブルの3種目があり、フルーレとサーブルは胴体のみへの攻撃が有効なのに対して、エペは唯一、足を含めた全身への突きが有効となるので、距離をとったところから攻撃を繰り出せる身体の大きな選手や腕のリーチの長い選手が有利とされています。

決勝の相手は地元フランスの『英雄』といわれているヤニック・ボレル選手、試合会場であるグラン・パレにフランス国歌の大合唱が響く完全アウェーの中でした。身長197cmという巨体と長い腕のリーチを誇るボレルに対して加納虹輝がスピードを活かした冷静な試合展開を見せて得点を重ね、先に15点を奪って勝利しました。



普段から熱を込めてオリンピックを観戦しているわけではありませんが、こうした日本人選手の活躍ぶりを見せてもらえることは嬉しいものです。これからまだいろいろな競技が開催されますが、過度に期待をかけないように楽しめればと思っています。

さて、そんなパリオリンピックに因んで何かないのか…と思ったのですが、ここはやはりモーツァルトの《交響曲第31番ニ長調》を聴いてみようではないか、ということに、個人的に落ち着きました(何ぢゃそら…)。

この曲は1778年にパリの演奏団体コンセール・スピリチュエルの支配人ジャン・ル・グロからの依頼によって作曲されたため、『パリ』の愛称で呼ばれることがあります。交響曲としては、1774年に作曲された第28番ハ長調 K. 200(189k) 以来、3年半ぶりの作品となりました。

この曲には、かつてモーツァルトが学んだマンハイム楽派の影響や、パリの聴衆の好みに合わせたフランス趣味が盛り込まれた点が特色です。また楽器編成の上では、普段はオペラ以外では一本しか使わないフルートが二本あったり、初めてクラリネットを含んだりする完全な二管編成をとっているのですが、これもかつてマンハイムの優れたオーケストラでクラリネットという楽器を十分に知り、パリでもそれを活用できたことによるものです。

この作品はモーツァルトとしては異例なほど推敲を重ねた上、依頼主であるル・グロの注文によって第2楽章を書き直すという過程を経て完成しました。そして、1778年6月18日のコンセール・スピリチュエルの演奏会で初演され、大成功を収めたと言われています。

この曲の自筆譜スコアが残っているのですが



現在のスコアとちょっと書き方が違っています。現在では上の段から木管楽器・金管楽器・ティンパニ・弦楽器となるのですが、このスコアでは一番上にヴァイオリンとヴィオラ、その下にフルート・オーボエ・クラリネット、更にその下にホルン・トランペット・ティンパニときて、その下にバソン(ファゴット)・チェロ&コントラバスとなっています。

そんな自筆譜スコアを基にした演奏動画があったので、転載してみました。クリストファー・ホグウッド指揮、アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージックの演奏で、かつてパリを沸かせたモーツァルトの交響曲をお楽しみください。



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