じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

東野圭吾「闇の中の二人」

2019-10-12 14:34:02 | Weblog
☆ 東野圭吾さんの「犯人のいない殺人の夜」(光文社文庫)から「闇の中の二人」を読んだ。

☆ 早朝、中学教師、永井弘美に男子生徒から電話がかかってきた。それは「今日(学校を)休む」というものだったが、その理由を聞いて彼女は沈黙する。生後3か月の弟が殺されたというのだ。

☆ そこで、お決まりの犯人探し、犯行の動機になっていくのだが、状況が映像のようにイメージできるのは、さすがに人気作家だ。

☆ 短い作品でも、読者を満足させてくれる。

☆ 敢えて難を言えば、生徒が先生の家に直接「休む」と電話するだろうか。先生の電話番号は教えないはずだが。

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宮部みゆき「返事はいらない」

2019-10-12 13:45:58 | Weblog
☆ 高校の中間テストが終わり、ちょっと一息。それに台風で外出もできないので、今日はミステリー&サスペンスの読書dayにした。

☆ 宮部みゆきさんの「返事はいらない」(新潮文庫)から表題作を読んだ。

☆ 男女のすれ違い。男の「さよなら」にすっかり空っぽになってしまった千賀子、死のうと決意した。とはいえ、なかなか実行できず、思い詰めて登ったマンションの屋上。そこで、ある夫婦と出会い、ある犯罪に誘われる。

☆ それは銀行のATMにまつわる脆弱性を暴露するというもの。綿密に計画され、実行される犯罪。完全犯罪に見えたのだが・・・。

☆ 周到な取材、過去の銀行犯罪やATMの仕組みについて詳しく知ることができた。(今ではATMも進化し、小説に書かれているような手口ではムリだろうが。たぶん・・・)

☆ 犯罪の描き方がうまい。それに、ちょっぴり女心の切なさを感じる作品だった。


☆ ところで、ゼロ金利政策は銀行経営をかなり痛めているようだ。私の近くの地方銀行ではATMが5台から4台、4台から3台と減ってきた。信用金庫も4台あったATMが3台に。リース料の節約だろうか。利用者の利便性など、もはや二の次という感じ。

☆ 大手都市銀行は振込手数料をまた上げるという。ただでさえ金利がゼロに等しいのに、実質的なマイナス金利だね。

☆ マイナス金利政策というのは、どうも不健全に思える。ツケの先送り。いつか、誰かがそれを支払うときがくる。そう考えると小説よりもスリリングだ。
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伊坂幸太郎「ドクメンタ」

2019-10-12 12:31:50 | Weblog
☆ 伊坂幸太郎さんの「アイネクライネナハトムジーク」(幻冬舎文庫)から「ドクメンタ」を読んだ。

☆ 「アイネクライネナハトムジーク」は連作短編集。一つ一つの話がスピンオフのような感じだ。この世界はもつれた糸のように、人も出来事も絡み合っている。

☆ 妻子に家出され、それに思い悩んだ藤間は、仕事でミスをする(このあたりは第1話「アイネクライネ」に書かれてある)。今回はこの藤間の話。

☆ 5年に一度の運転免許証の更新。随分と気の長い話だが、藤間はある女性と3度(5年前、現在、5年後)、自動車免許センターで出会う。その女性との会話を通して、藤間の妻子がなぜ家を出たのかが語られる。

☆ 不祥事の後、藤間は課長に誘われ飲みに行った。そこで課長が語った外交の要諦が興味深かった。1、毅然とした態度、2、相手の顔を立てつつ、3、確約はしない、4、国土は守る。これは夫婦生活にもあてはまるという。

☆ さて、物語は主人公を変えながら、まだまだ続きそうだ。
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有栖川有栖「切り裂きジャックを待ちながら」

2019-10-11 22:41:08 | Weblog
☆ 有栖川有栖さんの「ペルシャ猫の謎」(講談社文庫)から「切り裂きジャックを待ちながら」を読んだ。

☆ ある劇団の看板女優が拉致監禁される。届いたビデオテープには彼女の映像と身代金要求のメッセージが。

☆ 劇団の知人に依頼され、有栖川は劇団に。事件なのか、それとも嫌がらせ、あるいは狂言なのか。判断に迷った有栖川は火村を呼ぶ。

☆ 舞台ではリハーサル、そこで思わぬ惨劇が・・・。

☆ こんな動機で人を殺すのかと思うが、サイコパスに常人の理屈は通じない。

☆ ところで、「切り裂きジャックを待ちながら」はサミュエル・ペケットの「ゴトーを待ちながら」のモジりとか。私は演劇に詳しくないので初耳だったが、「ゴトーを待ちながら」という作品は名作らしい。ゴトー(神を表すゴッドの隠喩とも)を待つ人たち。しかし結局ゴトーが登場しない芝居らしい。

☆ これを聞いて、映画「桐島、部活やめるってよ」が思い浮かんだ。あの映画も最後まで「桐島」が登場しない。興味深かったので検索すると、多くの人がコメントを書いていた。


☆ ドラマ「火村英世」の方は、面白かったが終盤は「シャングリラ十字軍対火村英生」って感じで、何か私の好みからは離れていった。「火村英生」の面白さはシリアスな中にもコミカルな一面、シャロック・ホームズや「ガリレオ」のような論理的な推理だったが、その味わいが薄まっていたように思う。視聴者のターゲットも若年層に移ったのだろうか。

☆ 「切り裂きジャックを待ちながら」もドラマ化されている。冒頭部分を観たが、かなり現代風(受け狙いか?)に脚色されている。原作の方が面白く思ったのだが。一応続きも観てみよう。
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平岩弓枝「鏨師」

2019-10-10 18:14:22 | Weblog
☆ 平岩弓枝さんの「鏨師(たがねし)」(文春文庫)から表題作を読んだ。緊張感のある面白い作品だった。作品中に刀剣の姿が描かれているが、そのような凛とした感じを受けた。

☆ 刀剣鑑定家がいる。彼の義弟に器用な鏨師がいた。カネのため偽の銘を打ったために、義兄から絶縁される。

☆ その鏨師が病に倒れ、余名わずかとなる。保有していた刀剣は処分し、最後に残った一振り。鏨師の娘がそれを鑑定家(つまり伯父)に、鑑定を依頼する。

☆ その刀は本物かそれとも偽物か。この刀に込められた想いとは。

☆ 職人の矜持をかけた勝負に引き込まれる。

☆ 1959年(昭和34年)の作品だが、本物は決して色褪せない。真の刀剣同様、普遍性を感じさせる作品だった。
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校長の力量不足と孤独

2019-10-10 10:24:23 | Weblog
☆ 「そこまで嫌がっているとは思わなかった。悪ふざけが過ぎた」、神戸市立小学校の同僚教員いじめ(ハラスメント)問題。校長の聞き取りに加害教員が語った言葉だという。

☆ 校長の指導がどれほどのものだったかは不明だが、それを受けた加害教員は被害教員に不満を述べていたとも言う。

☆ いじめの首謀者がいて、その取り巻きがいて、彼らを傍観する人達がいる。典型的ないじめの構造だ。これが小学生、中学生ならよくあることだが、30代、40代の教員の話となると絶句せざるをえない。

☆ 教員のパーソナリティの問題、教員組織風土の問題、管理職の問題。問題が重層的に堆積しているようだ。

☆ 「校長は校務を掌り、所属教員を監督する」(学校教育法)と定められている。

☆ 今回の原因を校長の力量不足とするのは酷な気もするが、長期にわたるハラスメント、それにしかるべき指導ができなかったこと、ハラスメントを止められなかったことの結果責任を問われよう。校長、教頭を含め管理的立場にある教員がナメられていたと言ってもよい。長期在勤の教員と短期で転勤を繰り返す管理職との力関係も気になる。

☆ 前校長の指導の在り方も気にかかる。管理職の交代、経営方針の変更、その辺りの影響はどうなのだろうか。

☆ 教員の年齢構成も気にかかる。1980年代、教員の採用が抑制されていた時代があった。一方で団塊世代の大量退職で若年教員が増えている。さらには非正規採用の教員(講師)の増加だ。そのせいで教員の年齢構成がいびつになっている。「チーム学校」とは言い、多様な人が学校に絡んでいるが、根幹の経営システムが揺らいでいるように感じる。教員組織が弱体化しているのではないか。

☆ 児童・生徒の教育、これは学校の本務だ。それに親対応、教委対応。教員組織がしっかりしていてこそこうした激務に対応できるが、その足元がぐらついていたのではどうしようもない。

☆ 力量が不足していても、大過なく職を全うする校長もいる。優秀な教頭に恵まれたり、たまたま大きな問題が起こらなかったりと運が味方すれば、「飾り」のような校長でもやっていける。逆に、力量があってもその力が十分に発揮できない経営環境というのもありそうだ。

☆ かつて管理職と組合が激しく対立する学校があった。その組合も今では組織率が低下して(行政側の圧力の成果か、そもそも教員が組合活動のような拘束性を嫌う傾向にある。世の中が豊かになったのも大きい。多忙の問題はあるとはいえ、教員の待遇も戦後間もなくの劣悪なものとは比べ物にならない)、教員文化に大きな影響を与えていないようだ。世代間の断絶があるのかも知れない。

☆ 自分自身の考えを整理しながら書いていると多くを書きすぎた。

☆ 「やんちゃな教員」は今に始まったことではない。加害教員は児童の指導はしっかりやっていたようなので、そういう意味では「不適格教員」ではない。何が彼らを継続的なハラスメントに追い込んだのか。学校経営や行政の在り方はどうだったのか。非常に興味深いところだ。

☆ そして、今回の件は特異な例なのだろうか。他の学校では同様のハラスメント(教員の性的ハラスメントはよく聞くが)は起こっていないのだろうか。学校の閉鎖性も改めて問題に感じる。
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有栖川有栖「絶叫城殺人事件」

2019-10-09 17:22:40 | Weblog
☆ ドラマ「火村英生」の原作、有栖川有栖さんの「絶叫城殺人事件」(新潮文庫)から表題作を読んだ。

☆ ドラマでは第1シーズンの第1話。小説では連続女性通り魔殺人の舞台が大阪になっているが、ドラマでは京都になっていた。(このあたり京都人には親しみがもててたまらない。実際は撮影所の都合かな。あるいは京都を舞台にすることによって視聴率を狙ったか。)

☆ 舞台設定以外は、ほぼ原作通りだった。ドラマを観てから原作を読むと、火村は斎藤工さん、有栖川は窪塚正孝さんのイメージで読んでしまう。窪塚さんの存在感が私は好きだ。

☆ 「絶叫城」というのはホラーゲーム。それに登場する「ナイト・プローラー」という文字の書かれた紙片が被害者の口内から発見される。連続殺人の共通性は何か。警察そして火村、有栖川の名コンビが犯人像をプロファイリングする中、次の被害者が出た。ゲームでは4人の犠牲者と共に「GAME OVER」となるのだが・・・。


☆ さて、ドラマの方は第2話、第3話と観た。

☆ 第2話「異形の客」は、顔面包帯姿の人物がカギを握る。ぼさぼさ髪をかきながらの火村の登場。金田一耕助のようだと思ったら、ちゃんと有栖川がそのセリフを言ってくれた。こういう時は嬉しい気分になる。そもそも包帯姿というのは横溝正史さんの「犬神家の一族」を思い浮かべる。

☆ 第3話「准教授の身代金」は、妻が殺したはずの夫の死体が消えるという話。そして妻に夫の身代金の要求が。身代金の入った鞄を抱えて電車に乗っているシーン、黒澤明監督の映画にあった。映画の名前が思い出せなかったが、これもセリフで「天国と地獄」と教えてくれた。視聴者の心を読んでいるような脚本だ。こちらも嬉しい気分になった。

☆ 最近の若い人は「犬神家の一族」「天国と地獄」といってもわからないだろうが、高齢者には懐かしい。ドラマ「火村英生」はレトロ感満載で嬉しい。
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「山谷ブルースの真実」

2019-10-09 10:29:44 | Weblog
☆ 昨日に引き続き、京都新聞「地域プラス」の紙面。樺山聡記者による「山谷ブルースの真実」を読む。

☆ 岡林信康さんの「山谷ブルース」、この歌には原作詞者がいた、ということで取材が始まった。その人物は表に出ることを好まないという。難航が予想されたが、遂に記者はその人、平賀久裕氏のインタビューに成功した。

☆ 岡林さんと平賀さんは同志社大学神学部の同窓だという。学園紛争の時代。高度経済成長の裏側で進行する「戦後日本の矛盾」、彼らはその「現実」を知るため「山谷に飛び込んだ」という。

☆ 平賀氏はその時の体験をもとに「山谷ブルース」の原詞を書く。当時流行っていた扇ひろ子さんの「新宿ブルース」を口ずさみながら書いたという。

☆ ということで、「新宿ブルース」を聴いてみた。リアルタイムでも聴いていたであろうが、当時の私は小学生だったのであまり気に留めていなかった。今聴くと夜の街に生きる女性の哀愁(あるいは情念、怨念、諦め)が伝わってくる。当時の歌謡曲は実にシンプルだ。起承転結。

☆ インタビューは続く。次の掲載は16日だという。
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「新型英検」予約申込期間延長

2019-10-08 22:48:46 | Weblog
☆ 複雑になりすぎて何が何だかわからない。高校でも混乱が広がっており、結局は個人任せの様相だ。

☆ 2020年から大学入試に活用される民間テストについてである。「新型英検」の予約受付期間が延長された。現場の混乱、受験生への周知の不十分さを露呈した形だ。

☆ 果たして本当に民間テストを活用することができるのか。少なくとも短期的には疑わしい。

☆ 文科省だけが突っ走って、英検協会などの民間事業者が、何とか折り合いをつけているようだが、採用する大学は不確定であったり、その活用のされ方がよくわからなかったり、そもそもどのテストを受験するかさえわからない。

☆ 会場の問題、受験料の問題。残された問題が多そうだ。ここは総理大臣の政治決断で3年ほど延期した方が賢明なのではないだろうか。
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高見順「虚実」より

2019-10-08 16:43:56 | Weblog
☆ 「日本近代短篇小説集」(岩波文庫)から高見順さんの「虚実」を読んだ。

☆ 全体は大きく4部に分かれているようだ。第1部はとても面白かったが、その後は私にとってはどうでもよい話で興味を失った。

☆ 第1部は、劇的に始まる。男が蜜柑箱を下げて駅に降り立つ。蜜柑箱には死産で生まれた我が子の亡骸が入っている。男はその「棺桶」を火葬場に持っていくのだ。

☆ 話は、壮絶な出産風景に移り、産婆、医師、看護婦の様子、阿鼻叫喚の妊婦の様子、おどおどと立ち回る男の様子が活写されている。

☆ 第2部は、第1部の出来事の背景が描かれ、その後はドロドロとした人間模様に入っていく。さすがに最後の2行はドキッとしたが、どこまでが実でどこからが虚なのであろうか.
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