私のそばには、いつも啄木歌集がある。啄木ほど故郷にこだわった人物はいないだろう。啄木にとって故郷は「ふるさとの山に向かひて言ふことなしふるさとの山はありがたきかな」であり、「石をもて追はるるごとくふるさとを出でしかなしみ消ゆる時なし」である。故郷渋民村の自然は親友であるが、自分を偏見する人間は敵であるというゆがめられた思慕が同居しながらも望郷している。故郷は良きにつけ、悪しきにつけ永久に忘れてはならないものであるということを示唆しているようでならない。〝故郷〟、それは人間の心のふるさとなのかも知れない。
鹿児島市鴨池 川畑清一郎(58) 2006/4/23 掲載
鹿児島市鴨池 川畑清一郎(58) 2006/4/23 掲載