「あんなに鳴いて大丈夫かな」「一晩中泣き続けてるのよ」「少しぐらいは休んだらいいのに」「羽を擦り合わせて涼しげな音をだすのよ」「それは知っているけど、羽がすり減ってしまうのではないか心配だよ」「でも間もなく鳴かなくなりますよ」「なぜ」「雌は産卵を迎えると雄を食べ、それが終わるといなくなりますよ」「そうか、死んでしまうのか。知らなかった。悲しい運命だね」「ほんと。短い命だから精いっぱい鳴いているのでしょうね」。夫婦の会話の数日後から、鳴き声がだんだん少なくなり、やがて鈴虫の“囀り”はやんでしまった。
志布志市 一木法明(73) 2008/10/2 毎日新聞鹿児島版掲載
写真は里人さん
志布志市 一木法明(73) 2008/10/2 毎日新聞鹿児島版掲載
写真は里人さん