はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

灰よ、降れ

2010-02-18 12:21:39 | はがき随筆
 敗戦の年、たっぷり降った灰を、ピンク色に染めて遊んでいたっけ。          いま、縁側でザラザラ、髪パサパサ、めがね汚れるで、愚痴りたくなる。
 だが待てよ。
 二千年以上も昔、旧約の民は、自分たちの罪に気付くと、灰をかぶって悔い改めたのではなかったか。
 降灰がおのれの心を糾明する道に向かわせるなら、これはもう恵みというしかない。
 灰よ降れ。  
 わたしの心に。
  鹿屋市 伊地知咲子(73) 2010/2/18 毎日新聞鹿児島版掲載

言うは易く

2010-02-18 12:18:05 | はがき随筆
 きょうも朝から野菜たっぷりの食事を作る。
 長年の生活習慣が、私の体を「血圧高め」の状態にしてしまった。加えて体質遺伝もあるのだろう。できることなら薬に頼らず自分の力で正常な血圧を保ちたいものである。
 まず食事に気をつけること。野菜中心に海藻、きのこ類、牛乳や豆類。肉や魚ももちろん大事だ。これらを減塩で調理する。これまで通りウオーキングを続ける。そして減量。これこそ私にとって「言うは易く行うは難し」の見本のような難題だが、クリアできなければ、やがて薬の世話になることになる。
  薩摩川内市 勝野加枝(67) 2010/2/17 毎日新聞鹿児島版掲載

雪と赤い火

2010-02-18 11:29:34 | はがき随筆
 久しぶりに積もった雪は、吉松を中心とした地震を思い出させた。四十数年前、牧園に住んでいた。雪が20㌢程積もった朝、夫と小1の娘を学校に送り出して下の子2人と遊んでいた。
 突然、家がきしんで揺れた。地震だ。とっさに下の子を帯で背負い、掘りごたつの中から練炭こんろを取り出し、上の子を抱いて外に出、真っ赤な練炭の火を積もった雪の上に放った。
 ジュッと鳴って赤い火は、雪を溶かしながら消えた。外はまるで遠くから山が鳴りながら近づいて来るような光景だった。
 何度も繰り返す揺れの中で、地震の弱まるのを待っていた。
  薩摩川内市 森孝子(67) 2010/2/16 毎日新聞鹿児島版掲載