はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

門出・旅立ち

2010-04-24 11:31:10 | はがき随筆
 南国から北国札幌就職への旅路は今も心に残る良き思い出である。昭和43年春、当時飛行機は庶民にとって高嶺の花。西駅発寝台列車で一夜を明かす。
 寝台は上中下段あり、中下段は料金割高。体の大きい私は、上段でくノ字我慢の寝姿で東京着。上野駅から青森そして乗船4時間余りの青函連絡船で函館へ。さらに一面雪絵巻の原野を列車は走り抜け、大望を抱く札幌に到着した。
 門出の長旅は、かたい決意で任地へ赴く私の貴重な時間となり、連絡船十和田丸で食べた呉汁と鮭弁当は、旅立ちにふさわしい格別な味となった。
  鹿児島市 鵜家育男(64) 2010/4/24 毎日新聞鹿児島版掲載

私は知っている

2010-04-24 11:29:05 | はがき随筆
 2割引の赤いシールが張ってある鮮魚コーナーのタイムサービスで、衝動買いしてきた奥様である。早速、冷凍室へ入れようとして娘に言われた。「長く置くと冷凍やけして味が変わるよ」と。ならばと幾つか娘の持ち帰りとなったのだが、期限の確認をしているようだ。以前、奥様は孫たちに肉まんを「チン」しようとして「待った」がかかった。残念ながら期限切れで、孫たちはジュースとおにぎりにかぶり付いていたことがあった。
 備えあればと、置いていたのを忘れるようでは「年だね」と、奥様はぼやいていたのを知っている。
  鹿児島市 竹之内美知子(76) 2010/4/23 毎日新聞鹿児島版掲載


「母の選択」

2010-04-24 10:54:29 | 岩国エッセイサロンより
岩国市  会 員   貝 良枝

娘が起きてきて「あー、久しぶりに夢を見た。幸せ気分」と言う。どんな夢を見たのだろう。すごく気になった。「どんな夢だったん?」「あのね、家から学校に通っているんよ」とうれしそうに話す。

寮生活をして1年。春休みで帰省した娘は煮魚や煮しめをほおばり、その日のうちに洗濯ができることを喜ぶ。揚げ物の多い食事と、共同の洗濯機は苦痛なのか。

安さと頼りになる寮母さんのいる寮を選んだ。1人部屋。バス、トイレ付き。テレビもパソコンもある。30年以上前の寮生活とは比べ物にならない環境なのだが……。
(2010.04.20 毎日新聞「はがき随筆」掲載)
岩国エッセイサロンより転載