はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

流れゆく時間

2010-04-28 17:08:40 | はがき随筆
 新聞の余録に「時間を感じる長さは加齢により反比例する」と書いてあった。年を取ると次第に時間を短く感じる「ジャネーの法則」だ。周りの方も異口同音の答えが多い。私の余命も実際より短い計算になり、少し寂りょう感が心に残るが、こんな格言もある。「時間の濃度を高める」「時間を丁寧に使う」「時間という妙薬」「時間の使い方は、いのちの使い方」。厳しい響きの言葉。人には時計、歳月を示す時間と、もう一つは「心の時間」がある。これが何よりも大切に思う。流れゆく時間は早い。これからは心の各駅停車の時間濃度を高めたい。
  鹿屋市 小幡晋一郎(78) 2010/4/28 毎日新聞鹿児島版掲載





気づいたこと

2010-04-28 17:03:58 | 女の気持ち/男の気持ち
 最近の私の行動は元気だったころと違う。
 神奈川に住む小学生時代の男子同級生に便りを出した。突然のことに奥様を困惑させたが、懐かしいと返事があった。
 37年間動めた仕事を3月末に辞めた2人の知人には花を贈った。やはり突然の私からの贈り物に驚いたと電話があった。  
 長い入院生活で私の神経は研ぎ澄まされるようになった。個室のベッドの上で、真夜中の静寂の中で。物事の本質とでもいうのだろうか、自分にとって大切な「こと」や「ひと」、周りの人の心模様を深く見つめるようになった。私はすっかり変わった自分に満足してい
る。行動がスローになり、一つ一つを丁寧に成し遂げるようになった。
 新しい趣味は折り紙。退屈な時間のすき間に手を動かす。完成させ、作り上げた喜びを味わう。他人様に差し上げて喜ばれている。
 子供のころから作文などほとんど書いたことなかったのに、随筆も書くようになり、新聞や雑誌に投稿している。その折り紙と随筆を通して友人ができた。長崎県の83歳の婦人からは、同じ体の痛みを持つ者同士、明るく前向きに生きましょうと、美しい水仙の折り紙が送ってきた。福岡県の私と同年の女性は彼女の過去の投稿作品をまとめた本を送ってくださった。
 こんな生活を支えてくれている主人。それが最も大切な人である。私は本当に豊かなのだと気づいた。
  鹿児島県鹿屋市 田中 京子・59歳 2010/4/28 毎日新聞 の気持ち欄掲載