はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

いいね、いいね

2011-07-17 19:12:13 | はがき随筆
 母は、床ずれの治療のために1カ月入院していました。
 先生や、奥様、看護師長さんや職員の皆さんによくしていただき、私まで楽しい日々でした。 退院の時、言葉を忘れたかに見える母が、大きな声で「ありがとう」と、にっこり笑って言ったので、みんなで拍手をしました。
 朝夕の食事介助に頑張った自分へのご褒美には、真っ赤なシューズに合うグレーのスカートとピンクのTシャツを買いました。
 63歳の母の退院記念に、フォークダンスに挑戦します。
 母に見せてあげましょう。
  阿久根市 別枝由井 2011/7/17 毎日新聞鹿児島版掲載

緑のカーテン

2011-07-17 16:35:07 | はがき随筆
 ご多分に漏れず、我が家も今年は緑のカーテンにチャレンジしている。窓を覆うように外側に張ったネットに、ツル植物をカーテン状にはわせ、日差しをカットする。身近な省エネ方法として近所でも見かける。
 家の周りに4カ所作ったが、私の部屋の外にはゴーヤとヒョウタンを植えた。それぞれのツルも伸び、葉が窓の7割がたを覆っている。ゴーヤは3個ほど小ぶりな実をつけ、ヒョウタンも白い花から5~6個かわいい姿に変わっている。
 平年より早い梅雨明け。これからの強烈な日差しに、どれほど効果があるか期待している。
  鹿児島市 高橋誠 2011/7/16 毎日新聞鹿児島版掲載

1歩の力を

2011-07-17 16:27:00 | はがき随筆
 在任15年の出水市。56歳がいつの間にやら71歳。自分自身驚く。生誕して中学校卒業までの年月。体も知識も追い越されてしまった。この15年間、一体何を成し遂げて生活してきたか。
 教頭、期限付き教諭・講師・無職を経て、7月1日から鹿児島市在住になった。我が家にようやくたどり着いた。ほっとする反面、どう生きるか、心の支えは何だろうか。
 随筆・詩づくりの努めにと思うが、どう航海できるのか。彼方に年度賞・月間賞・グランプリ賞が存在する。挑戦の精神できょうも一歩の力を信じて……結果よりもきょうに生きよう。
  鹿児島市 岩田昭治 2011/7/15 毎日新聞鹿児島版掲載

咲いた咲いた

2011-07-17 16:06:32 | はがき随筆
 孫の春杜は、この3月30日で満3歳になったばかり。東日本大震災の余震が間断なく続く茨城県つくば市に住んでいる。3年保育の入園式に出席した翌日から、発熱と下痢で大学病院へ入院してしまった。園で、ロタという聞き慣れないウイルスに感染したらしい。私は「ヤツは大物だよ」と笑ったが、内心は心配だった。退院し数日後、携帯を耳に当てると「咲いた咲いたチューリップの花が……」の声が。「ええっ、あの英語と日本語のチャンポンの春杜が!」
 じいじとばあばは、その愛らしい歌声に、この上ない幸せを感じたのでした。
  霧島市 久野茂樹 2011/7/14 毎日新聞鹿児島版掲載

ベルよ止まれ

2011-07-17 15:59:44 | はがき随筆
 九州新幹線が大雨で不通になった。博多駅から近くに住む娘に携帯電話をかけていると突如「ピッピー」と防犯ベルが鳴り出した。驚いて止めようとするが、ケータイに弱い私が誤って押したベルは、怒ったように構内に鳴り響く。やむなく中年夫婦に助けを求めたが、助っ人にも止められない。
 見かねた売店の女性店員2人が駆け寄り、交互に操作するが警報は続く。「解除番号は?」「知りません」「そうだ!」と若い店員が叫び、ケータイ裏の電池を引き抜くとベルはとまった。「やったぁ」。5人は大喜び。土産は無論、その店で買った。
  出水市 清田文雄 2011/7/13 毎日新聞鹿児島版掲載

夫の感官のすべて

2011-07-17 15:53:39 | はがき随筆
 「お父ちゃん、ラジオでも聴く?」
 最近、テレビの画面もボンヤリとしか見えなくなっている夫が、余りにも静かなので、そう聞いてみた。
 「聴かなくていいよ。生きている時間を感じているから。ありがとう」
 ベッドの上でじっと目を閉じたまま夫は、そう答えた。夫の感官のすべてを私はまだまだ知りたい、感じたいと思う。4年前からほとんど寝たきりの生活の中、この穏やかさ、温かさ、繊細な感性は、いったいどこからきているのだろう。気宇壮大な人だと心から尊敬している。
  鹿児島市 萩原裕子 2011/7/12 毎日新聞鹿児島版掲載

感激した拝謁

2011-07-17 15:35:29 | はがき随筆


 父が病に倒れたのを機に教職を辞め、寺の住職を継職することになった。47歳だった。
 父は長年保護司をしていたがそれも同時に引き継ぐことになった。以来27年。罪を犯した人の更正のために30人近くを担当し、更正してくれた喜びと再犯の悲しさの両方を今日まで味わってきた。図らずも今回の叙勲で、瑞宝双光章を賜ることとなり、法務省での伝達式に続き夫婦同伴で皇居での拝謁の機会に恵まれた。
 短い時間ではあったけれども天皇陛下からの直接のお言葉と、参列者に対する笑顔の会釈には胸を打つものがあった。
  志布志市 一木法明 2011/7/10 毎日新聞鹿児島版掲載 画像はネットより拝借

高齢という嫌悪

2011-07-17 15:28:17 | はがき随筆
 今も忘れられない言葉。それは職場の上司が、ことあるごとに「若い元気だ」と励ます。だが、まだ青二才と言いたげな上から目線の口調がしゃくの種で早く歳を取りたいと思っていたころがすごく懐かしい。
 時がたち退職、還暦を過ぎ今は66歳。世間は前期高齢者と呼ぶ。最近は「高齢」の文字に敏感に反応し微妙な感情にさいなまれていた矢先、追い打ちをかけたのが免許証更新。平成28年まで有効と記載、次回更新は71歳。「何、71歳」と自問自答。驚きで目の玉が動かなくなる。「よし! 重ねる歳にあらがい生きよう」と誓った。
  鹿児島市 鵜家育男 2011/7/9 毎日新聞鹿児島版掲載