はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

名人さん来てね

2014-03-13 17:19:31 | はがき随筆
 市の「さわやかクラブ」の事務長の声かけで、児童クラブの子供たちと遊ぶことになった。風車、お手玉、花作りをすることになり準備をした。
 私は布に綿を詰めてチューリップの花を作る係である。
 小学生なので時間はかかったが、夢中になって取り組んでいた。「おばちゃん、できよた、きれい」と大はしゃぎ。さくらちゃん、みさきちゃん、ゆいちゃんもいた。私が糸通しに手間取っていると、「やりましょうか」と行って、さっさと通してくれた。漬物名人、ツワとり名人、昔ばなし語り名人も加わり、楽しかった。
  阿久根市 別枝由井 2014/3/12 毎日新聞鹿児島版掲載

3.11を忘れるな

2014-03-13 16:57:54 | ペン&ぺん
 
今冬、東京をはじめ北国が記録的な大雪に見舞われている。雪で右往左往する首都圏の人たちだが、ひとごとではない。鹿児島県民は灰が降るのには慣れているが、大量の雪ならば、果たしてどうだろうか。
 100年前の1914(大正3年)に起きた桜島大正噴火の死者・行方不明者は58人。昨年8月、桜島の灰が鹿児島市中心部に大量に降ったのは記憶に新しい。もし大正噴火クラスの爆発、地震が起き、灰が降り積もるならば空港や基幹道路、鉄道などの交通網はマヒし、生活が大打撃を受けるのは間違いない。いや、命の危険にさらされる。
 東京電力福島第1原発事故で、原発の安全神話が崩れた。我が家に住めない、戻れないという現実があり、古里を奪われたに等しい。薩摩川内市には川内原発がある。引き続き国や県、市、九州電力などはさまざまな指摘や住民らの声に、真摯に耳を傾けてほしい。
 愛車のブレーキが作動しなかったことがある。ドライブが好きで、安全運転が信条。操作ミスはないと確信していたが、ブレーキの不具合が数回起きた。調べてもらったが、異常はないという。だが「もし人をはねたら、取り返しがつかない」。新車で購入したが、泣く泣く手放した。車が己の意志通りに動かない恐怖。今も忘れられない。
 周囲を海に囲まれる本県はどこが大津波に襲われてもおかしくない。21年前の「8.6水害」は自然災害の恐怖、破壊力、避難の重要性を教えてくれた。更に東日本大震災で「想定外」という概念を学んだ。「まさか」「ここなら大丈夫」の発想を改め、あらゆる事態を考え対処しなければならない。
 「3.11」を機にもう一度、災害時に子供や高齢者ら弱者が犠牲とならぬよう「昭和」にみられた地域の助け合い、困った時はお互い様の精神を思い起こしたい。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 2014/3/11 毎日新聞鹿児島版掲載

10万年後の安心

2014-03-13 16:50:30 | はがき随筆
 「使用済み核燃料を強力な岩盤の中に閉じ込めて安心を得るまでには10万年かかる」。北欧のテレビで、こう報じていた。
 ブルトニウム半減期が2万数千年という。更にその先の半減期を考えると、すぐ10万年を超えてしまう。10万年後……?
 今から10万年前を考えてみると、日本の縄文時代が約1万年前、クロマニヨン人が約4万年前、現生人類の出現が5.6万年前といい、10万年はまだまだ先である。神が存在するなら神の領域に近い……? 原発が稼働する限り、使用済み核燃料は増え続ける。果たして、原発の推進は問題無しだろうか?
  出水市 中島征士 2014/3/11 毎日新聞鹿児島版掲載

母の介護

2014-03-13 16:44:29 | はがき随筆
 母が夕べ寝床に黒猫が入ったきたと言う。昔、猫を飼っていたので、夢を見たのかもしれぬ。母は2年半前に足を骨折し、妻と2人で介護している。
 市の主催で介護家族の研修会が開かれ、妻が参加した。研修会で1通の手紙が紹介された。「あなたの人生の始まりに私がしっかりと付き添ったように私の人生の終わりに少しだけ付き添ってほしい」。外国の母親が子供へ当てた手紙の一部だ。
 手紙には年老いた母親の願いがよく表れている。夜になった。「また明日ね」と言葉を交わして手を握り締めると、母は小さく笑って、眠りに就いた。
  鹿児島市 田中健一郎 2014/3/10 毎日新聞鹿児島版掲載

白内障手術

2014-03-13 16:37:07 | はがき随筆
 「あれまあ、わたしゃ20年もこの病院にいるけど、あんたらみたいに2人仲良く入院手術されるご夫婦は初めてですがよ」
 病院食を運んでくれたお母さんは、大きな声で屈託なく笑った。「ご主人は文章を、奥さんは絵を描きなさると……。羨ましかことで……」。妻57歳、私64歳。2人は昨日同時に左眼の白内障の手術を終え、今日の午後は右眼だ。眼科の院長は「医は仁術」を地で行くように人当たりが良く、診察事にも執刀事にも私は先生に丁寧に頭を下げる。そんな訳で楽しみにしていた霧島神宮豆まきも京町二日市も、今年はお流れと相成りました。
  霧島市 久野茂樹 2014/3/9 毎日新聞鹿児島版掲載

優れもの

2014-03-13 16:31:16 | はがき随筆
 突然マスクをかけた人に話しかけられると、一瞬固まってしまう。慌てて記憶の糸をつなぎ合わせて、名前が分かるとホッとする。分からないままだと消化不良で気がかりを引きずってしまう。分かったような顔をせずに、あっさりとかぶとを脱いで聞いた方がいい。マスクは人相を変える代物だ。そこで少し気まずい場所に出かけるのにマスクをと思い当たったのだが、眼鏡をかけている私には曇ってしまうのが難。ほんの短時間しか仕えない。それでも気楽だったのは確か。マスクは寒さや花粉症、風の予防になり、マスク美人をもつくる優れものである。
  霧島市 口町円子 2014/3/6 毎日新聞鹿児島版掲載

本との出会い

2014-03-13 16:24:51 | はがき随筆
 錦江町に住む友からの宅配便。独居は寂しかろうと気遣ってくれてか、おかずのパックをあれこれ詰めて図書券まで入れてある。お礼の電話をすると、「まだだったら『舟を編む』を買って読んでよ」と言う。
 本屋が遠いので、次女に読んだかと聞くと「先に読んで」と早速送ってくれた。感動して読み終えたところへ、今朝、毎日新聞火曜日掲載の火論に「ひたむきの迫力」と題して、玉木研二さんが三浦しおんさんのこの本のことを書かれていて、うれしかった。友人にもコピーして送ろう! 辞書作りの苦労と幸せの物語に感謝!
  霧島市 秋峯いくよ 2014/3/7 毎日新聞鹿児島版掲載

大丈夫かな?

2014-03-13 16:21:21 | 岩国エッセイサロンより
2014年3月13日 (木)


岩国市  会 員   稲本 康代

 年女である私は「きっと良い事があるよ」と正月に妹から言われた。2月に入り突然、次女の一家が岩国に転勤で、大阪から帰り我が家に同居する、という。びっくり仰天である。 
 10年余り1人暮らしに慣れて少々、自堕落な生活をしている私が、今更若い人と一緒に暮らせるかなー。うれしさと心配が交互に湧いてくる。ある人は「娘と同居とは良かったね。いいな」。また、ある友は「大変だよ。先が思いやられる」と私を気の毒がる。
 3月末に一家4人が帰ってくる。私の人生、いかに展開するやら。期待と不安の日々である。
   (2014.03.13 毎日新聞「はがき随筆」掲載)
岩国エッセイサロンより転載

おたがいさま

2014-03-13 05:36:34 | 岩国エッセイサロンより
2014年3月12日 (水)


    岩国市  会 員   山下 治子

 2ヵ月前、夫が頚椎の手術をした。ようやく首のカラーが取れたと大喜びの翌日、今度は私が半月板断裂等で入院となった。出先で履いたスリッパが滑り転倒、たかが転倒と思いきや痛みに耐えきれず、救急車を夫にすがった。動きの割には脳も体も年相応、用心されよと悟された瞬間に思える。手術後、担当医から、加齢も原因、と一言添えられた。 
 まだ完全ではない夫が大雪の日も病室へ日参してくれた。すさまじいけんかを繰り返しながら夫と私は百人力で家族を守ってきた。今は2人で1人分だ。支え合う「人」という字が夫婦と読めた。
  (2014.03.12 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載