私が生まれ育った大隅の山村。蛍が飛び交う頃になると、毎年家の近くに真っ赤な鳥が住みついていた。くちばしまで赤いこの鳥は土手に巣穴を掘り、子育てをして「キョロロローキョロロロー!」と甲高く鳴く。長老から、牛馬の使いだと教えられ大切に見守っていた。
いつの頃からか、さっぱり姿を見せなくなった。田中一村の絵の中や奄美大島にはいるらしい。時々、テレビやラジオでその声を聞くと子供の頃を思い出す。裏山からコジュケイやホトトギスの鳴き声がにぎやかに聞こえて、それが日常だったあの頃は自然も心も幸せだった。
指宿市 有村好一 2014/6/1 毎日新聞鹿児島版掲載