はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

約束

2016-03-03 14:52:11 | はがき随筆


 雨上がりの夕方、仕事を終えて駐車場に行くと、えっ、なんだこれは…。車にいっぱいべとべとした物がついている。鳥のうんこ? いや、よく見ると赤い実もついている。上を見上げる。ああ、そうか、これはもちの木とそこに遊びに来た鳥たちのいたずら、落し物だ。
 「もちの木さん、こんな落し物いりませんよ。しかもこの車買ったばかりなんですよ」「ごめん、ごめん。すまない。でもどうすることもできない」「私の方こそごめんなさい。もうここに車は止めません」。それから私は、もちの木との約束を守った。
  出水市 山岡淳子 2016/3/3 毎日新聞鹿児島版掲載

週2回のプレー

2016-03-03 14:45:42 | はがき随筆
 近くの公園へ行き、グラウンドゴルフの用具をセットし参加者名をノートして、歩くことがもったいなく思えるグラウンドでプレー。まことに厳粛な雰囲気である。それが順次ほどけてゆく。奇声、歓声をあげつつホールインへの願いが続く。しかし思うようにいかないのが常で一喜一憂の表裏がある。
 何よりのよろこびはその日一番のホールインである。だれとなく激賞し、己も励む。4ゲーム目の休憩は世の中談、わが生活談でにぎやかだ。週2回ここで気持ちをほぐし、話しながら太陽の光を浴びるよろこびは大きい。
  鹿児島市 東郷久子 2016/3/2 毎日新聞鹿児島版掲載

体調復活

2016-03-03 14:37:59 | はがき随筆
 昨年の秋深まったある日、体調を損ね病院通いの身になった。どうやら夏バテの延長のようだ。元気印を標榜していた私としたことが、熱発まで起こす始末。近くの医院で検査を受け4週間ごとに投薬してもらうが、簡単には数値の改善に至らない。むやがて3カ月になる。立春もとうに過ぎた。
 縁側でガラス戸越しの日差しを背にはわせながら新聞に目を通していると、季節のうつろいとともに私の体内時計も正常に作動し始めるのを感じる。
 もう無理せず、いろいろな意味でバランスのとれた暮らしをと思うこのごろです。
  鹿屋市 門倉キヨ子 2016/3/1 毎日新聞鹿児島版掲載

初めての雪かき

2016-03-03 14:31:50 | はがき随筆
 先日の大雪。自宅前の歩道を初めて雪かきした。もし歩く人がいたら困るだろうと、せめてここ15㍍くらいだけでもと、小学生の娘と共にシャベルで汗をかいた。この地で20㌢以上も積もったのは記憶にない。雪国の人たちはこれを日常としているのだろうなと、テレビで見る光景に重ねた。向こうから女性が歩いてきた。少しはありがたいと思ってくれるかな。近づいてくる足元をみて少しがっかり。車道の方を歩いて来られる。なるほど車が踏み固めた轍の方が歩きやすい。ふわふわ舞う雪の中、私たちの横をサクッサクッと過ぎ去っていった。
  出水市 山下秀雄 2016/2/29 毎日新聞鹿児島版掲載

挫 折

2016-03-03 10:18:07 | 岩国エッセイサロンより
2016年3月 1日 (火)
     岩国市  会員    山本 一

 やりたいことに対して時間が足りない。年頭に中期と年計画を立てる。退職後12年、まだ在職時の癖が抜けない。
 さてどこで捻出するか。「あった。晩酌の時間だ」。毎日2時間半、至福の時間の削減を決意。三が日を過ぎ、早速実行。とにかく酒は1時間半でやめた。約1時間の短縮に成功。
ところが、この「ほろ酔いの1時間」の使い方がなかなか難しい。これまでと全く変わらず、某テレビ局のニュース番組を見ながら居眠り。23時ごろ、書斎に上がり、約1時間はパソコンに向かう。以前のままだ。我が聖域への小細工はやめた。

     (2016.3.1 毎日新聞「はがき随筆」掲載)