はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

相性

2016-03-30 18:11:23 | はがき随筆
 カミさんが卯年で私は子年、占い本によると相性は大吉。実の両親は父が丙午、母が丑年と相性は大凶で、父60歳、母53歳のとき離婚。そのとき相性は無視できないと思いました。
 大学の後輩から紹介された女性が卯年と知ったとき、この女性こそ赤い糸で結ばれているに違いないと決め込んで、半ば強引に交際を申し込んだのでした。数々の壁を突破、養子縁組もしてゴールイン、その女性が今のカミさんです。このほど金婚式を迎えました。カミさんが言いました。「何となく50年たったという感じだわねえ」。やっぱり相性大吉がよかった?
  西之表市 武田静瞭 2016/3/30 毎日新聞鹿児島版掲載

銀世界

2016-03-30 18:04:54 | はがき随筆
予報通り1月24.25は大雪となった。庭に出ると、夜明け前のしじまの東天は白い雪の世界を映し出している。足を運ぶとキュッキュッと雪が小さく鳴る。足跡の深さで積雪を感じつつ、戌年の私は犬がはしゃぐように雪の玉を転がす。転がす度に大きくなる姿に納得する。
 背丈ほどの雪だるまが完成した。雪景色に雪だるまはよく似合う。孫や義妹に写メールを送る。孫は雪だるまの大きさに驚き、義妹はベランダに雪だるまを作ったと返信が来た。妻に写メールを見せると、巳年の妻はこたつで丸くなっている。のどかな雪間の一こまである。
  出水市 宮路量温 2018/3/29 毎日新聞鹿児島版掲載

春もよい

2016-03-30 17:47:04 | はがき随筆
 目の前のテレビは今ついていない。その先の壁の板の節がくっきりと目に飛び込んでくる。
 2年前に亡くなった一つ年下の叔父が、白アリにやられてリフォームを頼んだときに、この部屋は板で天井と壁を葺く方がいいと勧めてくれた。壁の節の多い板材がえも言われぬ味わいを醸し出している。その横には二十で購入したセパレートステレオの旧スピーカーを鎮座させている。良い眺めである。そのほかにピアノと2点の絵画。落ち着くなあ。この情景は、いつまで続くのだろうか。
  いちき串木野市 新川宣史  2016/3/28 毎日新聞鹿児島版掲載

ヨンゴヒンゴ

2016-03-30 17:40:55 | はがき随筆
 新年早々、懐かしい人から電話があった。優しい声であいさつされるNさん。今年95歳を迎えられるそうだ。昔の変わらぬ笑顔が浮かび、うれしくて健康を祝福した。
 二十数年前、趣味の仲間でとても美しい文字を書いておられた。今では視力が弱り、字を書いても「ヨンゴヒンゴなってしもてなー」と笑われる。久しぶりに聞いた方言の響きに思わず大笑いした。決して上手には書けてない文字が踊っているさまを想像した。
 近ごろは方言を耳にすることもあまりなく、なんとなくユーモラスに聞こえたのでした。
 鹿児島市 竹之内美知子 2016/3/27 毎日新聞鹿児島版掲載

懐かしい顔

2016-03-30 17:02:25 | はがき随筆
 ずいぶん前になるが、あるテレビで東南アジアを旅行した初老の婦人に記者が旅の印象を聞いていた。「懐かしい顔の女性たちに会いました」と婦人。「以前あちらにお住まいでしたか」「いいえ、初めてでした」
 その後私は中国奥地で中年の2、3組の夫婦と列車で同席した。うろ覚えの中国語と通訳を交えて談笑した。婦人たちは笑顔を絶やさず私たちを眺めている。慎み深く大らかで慈愛深い雰囲気。「お母さん」と呼びたくなる日本の古き良き時代の面立ちである。冒頭の婦人の印象に納得することだった。街中でそんな顔を探しているのだが。
  鹿児島市 野崎正昭 2016/3/26 毎日新聞鹿児島版掲載

茶節

2016-03-30 16:56:16 | はがき随筆
 小3の娘の学校で、親子ふれあい活動があった。今年は頴娃茶の農家の団体に、緑茶のいれ方などを教わった。
 鹿児島の郷土食「茶節」の作り方も習った。出がらしの茶葉とかつお節、みそを湯飲みに入れ、お湯を注げば完成。みそ汁が好きな訳でもないのに、6歳の息子まで「おいしいからまた作って」と言った。茶節を作るために、かつお節削り機を使っての「早削り競争」まであり、手回しで削る機械を初めて見て、よく出来ているなと感心した。これを機会に、わが家も緑茶を楽しんでみたい。
  鹿児島市 津島夕子 2016/3/25 毎日新聞鹿児島版

平成維新

2016-03-30 16:50:05 | はがき随筆
 私たち昭和の日本人は世界に対し国を挙げて戦争を起こし、敗戦の憂き目を見た。
 平成の時代となり、東日本大震災の折、世界は暴動も起こさず粛々と復興に励む日本人を評価した。2020年オリンピック開催の選考にあたっては、世界の常識ある人たちの賛同を得、日本の価値は認められた。
 今ではクールジャパンとも称され、世界の人は、爆買いをはじめ日本人の生活に触れ、日本民族の気質も認めてきた。
 これこそ平成の人たちの起こした平成維新にほかならない。さあ、自信をもって世界平和の手を広げよう。
  鹿児島市 高野幸祐 2016/3/24 毎日新聞鹿児島版掲載

柔らかな頭

2016-03-30 16:44:21 | はがき随筆
 今朝、仏壇の花を取り換えるのに手間どった。一応、色どりや仕上がりを思い画いて花は準備する。でも、今日はまとまりが悪くしっくりこない。
 余分な葉を取り除いたり、全体的にほぐした感じにしてみる。いく通りか試した。意外にも、左のトマト花を右に差しかえただけで、まとまった。
 文章作りの推敲に共通していると思った。的確な言葉がみつからず四苦八苦。さらに肉付けすることだけ考える。ところが、文章を並べかえるだけで効果があることも……。
 固定観念を捨てて柔らかな頭が欲しい。
  垂水市 竹之内政子 2016/3/23 毎日新聞鹿児島版掲載