はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

過去との遭遇

2017-01-01 22:00:39 | はがき随筆
 押し入れの片づけをしていたら、天袋の隅に小さな風呂敷包みを見つけた。開けてみると、私の学生時代の日記類。どうしてここにあるのかさえ覚えがない。読み出すと結構面白い。半世紀も昔のことで記憶にないことばかり。恋の悩みや、人としていかにあるべきか思索にふける姿が青臭い。詩や短歌もあって驚く。へーっ、文学少女だったんだ。そして思い出した。
 二十数年前、実家でこれらを見つけ読み返したとき「青春小説が書ける」と我が家に持ち帰っていたのだった。すっかり忘れていた。まだ自分に夢を見られた過去の私が、そこにいた。
  出水市 清水昌子 2017/1/1 毎日新聞鹿児島版掲載

ご挨拶

2017-01-01 21:38:55 | はがき随筆


明けまして おめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

アップが遅れて、やきもきされたことでしょうが、お許しくださいね。
今年も、八十路にムチウッテ(?)頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします。
by 
アカショウビン

 

波兄ちゃん

2017-01-01 21:38:41 | はがき随筆
 突然いとこから電話。福岡に向かう車中「親父が亡くなった」と一言。ない? 
あんなに元気だったのに! 叔父の波兄ちゃんは立身出世の人で、自然にそなわっている「品格のある人」でもあった。心にしみた話が「こまんかとき、お膳を並べ食事を待っていたが出てこない。理由は縦膳だったからである。敵に不意に刀を打ち込まれたら命を落とす。横膳であればさっと刀を受け止め命を守れる」と明治育ちのお袋に人に隙を見せるなと厳しくしつけられた。
 改めて教えを振り返り、しばし考えてみたいと思う。波兄ちゃんありがとうさようなら。
 さつま町 小向井一成 2016/12/31 毎日新聞鹿児島版掲載

薄幸の人

2017-01-01 21:31:07 | はがき随筆
 実に不運な人がいる。2回結婚したが、子には恵まれなかったSさん。1回目は、がんの夫に先立たれた。2度目のSさんの夫Kさんは、4回も脳梗塞を起こし、現在は病院で寝たきり。言葉さえままならない。高齢の夫や病弱のSさんの兄弟は遠方い、ただ1人ずつ。
 心配で仕方がないSさんは、Kさんと知り合っていた私に「助けてください」と哀願。
 私は、せいぜい、入院先を訪れたり、Sさんの買い物に出かけるのがやっと。それでも、「ありがとう」と言われる薄幸の人、Sさん……。
  出水市 小村忍 2016/12/30 毎日新聞鹿児島版掲載

ツワブキの花

2017-01-01 21:22:17 | はがき随筆


 オガタマの樹下1㍍の高さに直径3㍍近い記念のオオタニワタリがある。その下には満開のツワブキの花たち――。
 初任地の大隅半島のへき地を思い出す。中学生に連れられてよく早春のツワ取りに行った。まずその大きさに驚き、取り立てのツワの味と香りに感動し、その魅力に開眼したものだ。
 集団就職などの家庭調書の職業欄に何人かは「ツワ取り」と書いていた。早出しのツワは重要な現金収入だったのだ。ツワの処理で彼らの爪先は黒く染まっていた。樹上のタニワタリの生えた自然の森も、満開のツワの花たちで輝いているだろう。
  出水市 中島征士 2016/12/29 毎日新聞鹿児島版掲載