はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

一喜一憂

2017-01-17 17:03:09 | はがき随筆
 昭和36年3月、実家の玄関に「電報です」。急いで受け取った私。それは、東大を受験した弟からの合格通知だった。家族が待ち望んだ吉報に歓喜の声が上がる。父は合否を案じて涙目だったが、満面の笑みになった。後日、帰郷の弟に「よかったね」。そして語気も強く「勝ってかぶとの緒を締めよ。おごり高ぶる事はなかれ」。「決してそんな」と弟。恩師の方々、親類から称賛の数々。努力は実った。4月の入学式に、父は単身上京した。胸中、花満開のうれしい旅立ち。子供たちに一喜一憂して、享年87歳での他界。天国で母と安らかに。
  肝付町 鳥取部京子 2017/1/13 毎日新聞鹿児島版掲載 


こたつ寝もよし

2017-01-17 16:54:09 | はがき随筆
 田舎の古い家で暮らしてした頃、冷え症の私は12月になると早々にこたつを出した。座椅子にもたれ、足を伸ばすと芯から温まって気持ちがよい。布団を敷いて行火も入れ、浴室から布団に直行しても、ほんの十数歩の間に足が冷えてしまうのだ。
 今の住まいは密閉度が高く前の家ほど冷え込まないが、12月下旬までにはこたつの準備をし、その夜はたいていこたつに入ったまま眠ってしまう。
 以前は何となく罪悪感を感じていたが、ひざ掛け用のケットを布団代わりに、ぬくぬくと眠れるのであればそれでよし、と思うことにしている。
  鹿児島市 本山るみ子 2017/1/12 毎日新聞鹿児島版掲載


山よそおう

2017-01-17 16:47:40 | はがき随筆
 県内の紅葉の名所は慈眼時公園や垂水千本イチョウなどしか思い浮かばない。そこで足を九州山地にある祇園山まで延ばした。
 7年ほど前、椎葉村を訪れたとき、この山周辺の紅葉の印象が大きかったので再度訪れたのである。ヤマハゼ、カエデなどの赤や黄色のコントラストは圧倒する様相である。山全体が秋化粧して登山客を歓迎しているのである。
 東北の八幡平や栗駒山にはスケール的には負けるけど、なぜか秋の風情を感じさせた山旅であった。
 山肌に人も気づかぬ秋をこめ
  鹿児島市 下内幸一 2017/1/11 毎日新聞鹿児島版掲載