はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

一陽来福

2017-01-19 12:30:46 | はがき随筆


 当時から僅かずつ夜明けが早くなった。晴れわたった空を見上げつつ、帰省の子らと近くの神社に初詣。昨年は、何度か体調を損ねたので「今年は元気で過ごせるように努力いたします」と神前にこうべを垂れた。宮司さんが「お祓いをしましょう。並んで低頭を」と言って、私たちに幣を振ってくださった。
 手作りのごまめ・ゆず大根・イカニンジン・キンカン・砂糖煮、そして今日便利なお取り寄せのお節は三段重ね。おとそ・お雑煮などを手早く並べ、楽しく新年を祝った。よい年になる予感を覚えた元旦でした。
  鹿屋市 門倉キヨ子 2017/1/19 毎日新聞鹿児島版掲載

すごいなあ

2017-01-19 12:24:00 | はがき随筆
 「行ってきます」
 荷物を車の助手席に乗せ、さあ出発しようとしたとたん、
 「キンコンキンコン」
 と鳴き出した。
  「あれっ、なんだ」
 見ると、赤いランプがついている。助手席のシートベルトをしてくださいというお知らせの音だった。
 ははあん、荷物が人みたいに乗っていたからだな。私は、そそくさと荷物を下におろした。音は、ピタッと鳴りやんだ。
 なんとかしこい車だろう。技術開発は進んでいる。すごいなあ。私は一人、クスッと笑った。
  出水市 山岡淳子 2017/1/18 毎日新聞鹿児島版掲載

大変身

2017-01-19 12:18:25 | はがき随筆
 私は10代のころから劣等感が強く、自分を押さえて生きてきました。その上、10年前に難病にかかり、障害者になってしまい、さらにへこむ日々でした。ですが、鹿児島市障害者支援センターの方々との出会いが、私の心の卑屈さを優しく解きほぐしてくれました。目・耳・手・足などさまざまな障害を、お互いに補い合い支え合いながら、諸講座を受講しています。手話コーラスで歌うことの楽しさを知った私は、なんと今では恥ずかしげもなく、つえをつきつつ人前で叫び歌っています。大変身した自分に私自身が驚き、でもそんな私が大好きです。
 鹿児島市 別府柳子 2017/1/17 毎日新聞鹿児島版掲載

たのしい一日

2017-01-19 12:12:38 | はがき随筆
 新年度も後半に入り、学校の宿題が始まった。『たのしい一日』と題されたノートには、日記欄のほかに自己評価欄までついている。小1にできるのかなと思っていたが、息子は喜々として日誌を開く。友達と鉄棒で遊んだことや、学校を探検したこと。『今日がんばったこと』を書くために、息子が授業で手を挙げるようになったときは本当に驚いた。先生にほめられた日は字まで躍っている。たのしい一日を重ね、たのしい一年になり、たのしい小学校時代を過ごせたらと思うと、『たのしい一日』とは秀逸なタイトルだなと思った。
  鹿児島市 堀之内泉 2017/1/16 毎日新聞鹿児島版掲載

高齢ドライバー

2017-01-19 12:06:04 | はがき随筆
 ついに愛車の乗り換え時期がきた。時はいつしかマニュアル車からオートマ車へと推移し、換えざるを得なくなっていた。時代の流れに乗り遅れた感があり、途方に暮れた。折しも相次ぐ高齢ドライバーによるアクセルとブレーキの踏み間違いの操作ミスだの高速道路の逆走などと震撼させるニュースが、やたら目に飛び込んでくる。身も凍る思いで聞いていた。それから、直ちに運転の勘を取り戻しはしたが、油断大敵と気を引き締め若葉マークの頃を思い出し、慎重な面持ちでハンドルを握る日々がスタートしたのだ。
  鹿屋市 中鶴裕子 2017/1/15 毎日新聞鹿児島版掲載

冬を耐える梅に希望

2017-01-19 11:54:35 | 岩国エッセイサロンより
2017年1月18日 (水)
   岩国市   会 員   吉岡 賢一

 妻の実家にある小さな梅林は、手入れを怠らなければ、毎年50~60㌔の梅の実を収穫できる。その実は梅干しとなり、毎朝の食事に欠かさず添えられる。また芳醇な手製の梅酒となって、晩酌を楽しませてくれる。
 その梅林は今、小寒から大寒に向かう厳しい北風に耐え、霜に耐え、雪に耐えて、つぼみを少しずつ膨らませて、花ほころぶ春に備えている。それはまさに、受験生か志望校を目指して最後の追い込みに入った姿に似ている。
 そして「耐雪梅花麗」を座右の銘とする元広島東洋カープの黒田博樹さんの存在の大きさが、改めて胸に迫ってくる。25年ぶりのリーグ優勝をもたらしてくれたあの黒田さんでさえ、耐えに耐えて花開く時節を待つ時代があったという。
 人間誰しも耐えなければならない試練が、一度や二度は必ずやってくる。そんなとき「雪に耐えて咲く梅の花の麗しさ」に思いを寄せ、希望を持って日々を過ごせるのは、幸せなことなのだろう。 

    (2017.01.18 中国新聞「広場」掲載)

楽しく気まま町歩き

2017-01-19 11:50:57 | 岩国エッセイサロンより
2017年1月14日 (土)
   岩国市   会 員   片山清勝

 健康のために歩いている。そのお供は小さなデジカメに携帯電話と歩数計。
 家の前は小さなつじ。「小鳥が飛んでいった」 「何か大きな音が聞こえる」など、気のむくままに第一歩を決める。
 藩政時代の細い迷路の通りでは歴史を感じる。棟上げに出合うと、しばらく立ち止まって眺める。大きな張り紙があると止まって読む。知った人に出会うと立ち話になる。
 同じ通りも、歩く向きが逆になると景色が変わる。
 道沿い、公園の草木や、水鳥の様子などに四季の移ろいを楽しみながら歩き、写真も撮る。こんな気ままな歩きでも、健康面だけでなく、ブログや投稿の題材に出合える。
 写真は16年目になる孫新聞への風景写真としても使う。何かに関心を示す、これも健康維持に役立つ。
 公園の梅が咲き始め、春が近づいていることを教える。今年も無理をせず、楽しみながら、また、思いもしない出会いも期待して町を歩こう。

    (2017.01.14 中国新聞「広場」掲載)

詫びと感謝と

2017-01-19 11:49:54 | 岩国エッセイサロンより
2017年1月10日 (火)
  岩国市  会 員   吉岡 賢一  

  「一富士二鷹三茄子」。これは初夢の縁起物ベストスリーで、これらの初夢を見たら「必ず出世する」と大真面目に話してくれた父。気持ちの奥には「このような夢の力を借りてでも出世街道を突き進め」という暗示だったのだろうか。 
 残念ながら、そんないい夢は見ることもなく、父の思いにかなう出世もないまま、年だけはいつしか父を上回ってしまって迎えた初めての正月。幸いにして、親からもらった体は健康そのもの。
 僅かながら世のためになる生き方もできている。そんな感謝と報告を込めて、お灯明をともす。  
  (2017.01.10 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

近ごろ

2017-01-19 11:47:41 | はがき随筆
 神様に「来年4月まで生かしてください」と一の願い。二の願いもやはり命のこと。「再来年の4月までぜひ」と懇願する。はたして……と思うが、かなえたまもものなら喜びにあふれることだろう。
 一の願いは本年度、この年で引き受けた役目を全うしたいからであり、二の願いは孫の行き先をかいまみたい故の願望である。
 欲なことと思いながら、まだ第九も歌いたいから、かなえていただいた暁には私にできる任を喜んで果たしたいと思っている。どうぞよろしくお願い致します。
  鹿児島市 東郷久子 2017/1/14 毎日新聞鹿児島版掲載