はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

特攻花

2017-06-08 17:26:25 | はがき随筆


 田舎の農道を歩いていると黄色の菊みたいな花を見た。気にはなったが、その花のことは忘れていた。その後、バラ公園へ妻と2人で行き、山野の道を歩いていると、妻が、この花は特攻花といわれると聞いた。いわれは知覧から飛び立った特攻隊員に贈られた花と教えてくれた。好奇心から山野草図鑑で調べるも、キンケイキクに似ているが……。さらにパソコンで特攻花と入力するとテンニンギクと出る。
 この花の真相はやはり天国に行った隊員からのメッセージと思うが、皆さんはいかに思われますか。
  鹿児島市 下内幸一 2017/6/4 毎日新聞鹿児島版掲載

新聞効果

2017-06-08 17:20:43 | はがき随筆
 
 遠くに居て、なかなか会えない娘や中高生の孫に、この便利な携帯電話の時代に逆らって、たとえ一方通行だとしても、何か気持ちを伝える手段はないかと筆を取る。それぞれに合った励ましや、わが家の近況報告も兼ねている。関心事の健康や教育に関する記事は見逃さぬように切抜き、同封することもある。子育て中の親には多くのヒントを与え、アドバイスもあり、とても参考になる。シニアが内容を理解するには高度な脳機能を使うため、刺激は大で、認知症予防にもなるらしい。良いことずくめの新聞効果、これからも続けようと思うのだった。
  鹿屋市 中鶴裕子 2017/6/5 毎日新聞鹿児島版掲載

テレビで面会

2017-06-08 17:14:47 | はがき随筆
 テレビに吹上浜の砂の祭典が映った。さまざまな砂像の景観がすごい。来年もまた発想豊かに人々を驚かせることだろう。
 ふと画面に姪に似た横顔を見た。あれと思っているとインタビューを受けて正面を向いた。おー香代ちゃんか、久しぶり、元気だね……。1人で画面に向かって話しかけていた。字幕で名前が出て映像は消えた。
 香代子は鹿大時代に中村晋也先生のブロンズ像に魅せられ、以来先生を師と仰ぎ彫塑に打ち込んできた。小さな身体で仕事は大変らしい。いま熊本の崇城大学で学生を指導している。孫たちよ、叔母を見習へと――。
  霧島市 楠元勇一 2017/6/6 毎日新聞鹿児島版掲載

あぁ私

2017-06-08 17:04:43 | はがき随筆
 あれしてこれして次はバスで出かける。庭の手入れの後のバス。お出かけは、まず服の着替えからまたたく間の準備。
 そこいらのものを着ていざボタンをかけると、こともあろうか胸の中央のボタンがちぎれてない。黒い小さいシャツボタンだ。洗濯のとき? と探すが、せわしく捜すので見つからない。シャツボタンの白を収納した引き出しから素早くえりだし、白糸で取りつける。なんと真っ白である。マーカーペンの黒でボタン糸とも黒く塗ってその場をしのぐ。バスに間に合った。よくある私の早業バンザーイ。まだまだできる。
  鹿児島市 東郷久子 2017/6/7 毎日新聞鹿児島版掲載

老人クラブ一考

2017-06-08 16:45:35 | はがき随筆
 県下の市町村に老人クラブ組織がある。会員になって8年。要請があったときに参加していた。昨年から地区会長になったところ、町、市、郡、県単位の行事活動の企画運営準備に出るこが多くなった。文化芸能、スポーツなど幅が広くなったためで、その苦労は理解できる。そして役員になり手がいない、加入者が少ないと言われる。役員の苦労あってこそ、参加者の元気はつらつとした顔が見れ、自分も元気をもらうのである。組織活動を充実するため、会員をよくまとめていくリーダー研修会こそ必要だと思う。モットーの健康寿命であるために。
  湧水町 本村守  2017/6/8 毎日新聞鹿児島版掲載

76歳の旅

2017-06-08 16:28:06 | はがき随筆
 海外旅行はもう最後かもと思い60歳違いの綾子とスペインへ。大繁栄をとげた国だけあって大聖堂、イスラム教寺院、王宮など石造建築物がすごい。
 特に心ひかれたのはピカソ生誕の地に近いミハスという白い村。石灰で白く塗られた家々の壁が光をはね返して白く輝いている。観光客でごった返す石畳の道を下って行くと村の教会があった。内部の立派さに驚く。旅の祈りをささげた。教会の裏手はもう地中海。向うに厚く横たわる雲の上に青い山脈の上部が見える。海峡の向こうはモロッコという。ああ、ついにアフリカ大陸を見た。
  霧島市 秋峯いくよ 2017/6/2 毎日新聞鹿児島版掲載

出会いは何百人

2017-06-08 16:15:02 | はがき随筆
 職業がら転勤が多く、故郷に帰るまでに11回の引っ越しをした。東京を中心に千葉、埼玉、神奈川、静岡、愛知と移り住んだ。知り合えた人も、北海道は旭川から南は石垣島までと幅広く、その言葉遣いが面白く忘れ難い。
 方言が心に残っている。その人を思い出すことがある。無我夢中で働いた日がよみがえる。知る人もいない大都会で、自分を見失うこともなく頑張れたのは、田舎育ちだったからか。今、自分を褒めてあげたい気分だ。母と妹が訪ねて来てくれたことがあった。ただただ天国の両親に感謝。
  伊佐市 坂元佐津夫 2017/6/1 毎日新聞鹿児島版掲載

切ない別れ

2017-06-08 16:09:16 | はがき随筆
 連休に次男一家と4日間共に過ごし、最後の夜は霧島に宿泊して空港で見送った。
 10か月の女の孫はまだごそごそだが、5月末に3歳になる男の孫はいっときもじっとせず、階段も一気上りするので手をつなぐ爺婆はもう必死。ホテルでは私たちの部屋に入り浸った。
 空港に着いて「また会おうね」と言ったら「帰りたくない」と泣いたので、出発時刻を待たずにカフェの前で別れた。
 少し歩いてふり帰ったら目線が合って切なかった。「振り返る勇気はなかった」と言った夫の目も潤んでいた。
  鹿児島市 馬渡浩子 2017/5/31 毎日新聞鹿児島版掲載

誠の心

2017-06-08 15:33:48 | はがき随筆
 中学時代、休憩時間で庭に出て遊んでいると、担任のS先生が近くに。科目は英語の指導だった。先生に「英文法を教えてください」。すると即答。「僕は英語はまぜくりはできるけど教える事はできない」と。本当に素直で実直、心の底がすぐ言えるなんてすばらしい。ちなみに私の父は上の立場。もちろん告げ口など子供なので考えつかないから、私の耳だけに残った言葉である。清流のように澄んだ誠の心を持たれた先生。2年間の担任をありがとうございました。今ごろ千の風に吹かれて、仏様になられ、遠い昔の若いお姿がまぶたに浮かびます。
  肝付町 鳥取部京子 2017/5/30 毎日新聞鹿児島版掲載

広島

2017-06-08 15:27:01 | はがき随筆
 昨年、アメリカのオバマ大統領が広島を訪問。今年3月、愛子さまの「世界の平和を願って」の全文が本紙に掲載された。深い感銘を受けた。
 四十数年ぶりの広島行きを決行した。リュックにスニーカー。今回は、我ながら意気込みを感じる。平和について考える広島の旅にしたい。
 原爆ドーム、平和記念公園、広島平和記念資料館などを見学。被爆者の遺品や惨状を目の当たりにし、原爆の恐怖、平和の尊さを強く思った。
 江田島の旧海軍兵学校を訪ねると、ちょうど入学式。空気も満開の桜も凛として……。
  垂水市 竹之内政子 2017/5/29 毎日新聞鹿児島版掲載

相聞歌

2017-06-08 15:08:43 | はがき随筆
 懐かしい歌に出会った。平安遷都1200年の頃、民放の番組で毎朝流れていた。歌詞も雅なバラードだった。タイトルは「相聞歌」。夫から妻への愛にあふれる言葉に満ちている。
 当時はCDを買うでもなく、月日は流れ2年ほど前に勝った宇崎竜堂のCDにこの曲が入っていた。
 あの頃、ひそきに想う人がいたから、一層心に染みたのだと思う。
 車の中でCDをかけ、選曲ボタンを押して、この曲ばかりを繰り返し聞いている。当時を懐かしく思うと同時に、重ねた年月の長さを感じる。
  鹿児島市 本山るみ子 2017/5/28 毎日新聞鹿児島版掲載