我が家の裏庭に回ると「雪の下」が盛りだ。白い花は横向き、上の3枚の花びらは短く赤い斑点がある。下の2枚は左右長さが異なり、鴨の足の形に見えるので「鴨足草」とも書くと歳時記にあった。葉は円く表面は緑色、裏は暗赤色で毛が密集している。かれんな花に見入っているうち亡き父を思い出した。
父は晩年、庭の一画に箱庭を設け、軽石で家や橋を造り、盆栽の草木を植えて故郷の風景を再現していた。今の時期に帰省すると箱庭の周りには雪の下が咲いて楽しそうに語る父がいた。父もこの花形の珍しさと優しい色合いが好みだったのだろう。
出水市 年神貞子 2017/6/11 毎日新聞鹿児島版掲載