今年は蛍を見に行った。デパートの屋上で飼われたものを見て以来の、自然の蛍だ。
桜が遅かったように、今年の蛍は奥手らしい。時分になって姿を現したのは数匹だった。それでも、闇から光が浮かび上がったときは、思わず声が出た。小学生の息子は光の粒を追いかけ、あやうく溝に足をとられるところだった。
沖行く夜船のように、ホタルは明滅しながら航海する。3秒光って、2秒消え、また3秒輝きを放つ。源氏蛍だったらしい。一旬にも満たないはかない命は、3代で絶えた将軍たちの甘露な夢にも似ている。
鹿児島市 堀之内泉 2017/6/22 毎日新聞鹿児島版掲載
桜が遅かったように、今年の蛍は奥手らしい。時分になって姿を現したのは数匹だった。それでも、闇から光が浮かび上がったときは、思わず声が出た。小学生の息子は光の粒を追いかけ、あやうく溝に足をとられるところだった。
沖行く夜船のように、ホタルは明滅しながら航海する。3秒光って、2秒消え、また3秒輝きを放つ。源氏蛍だったらしい。一旬にも満たないはかない命は、3代で絶えた将軍たちの甘露な夢にも似ている。
鹿児島市 堀之内泉 2017/6/22 毎日新聞鹿児島版掲載