岩国市 会 員 片山清勝
目の前に、分厚いマスクに保護眼鏡を掛けた人がいた。「花粉症じゃないの」と声を掛けられて、知人と分かった。重装備の知人には悪いが、遺伝なのか感度が鈍いのか、私は花粉症を経験したことがない。
思い返せば、子どもの頃には近くの山も遊び場の一つだった。広場と同じように駆け回った。
杉の実がなるころには杉鉄砲で遊んだ。小さな竹を銃身に、自転車のスポークや竹の串などを銃身の長さに合わせて切り、突き出し棒を作る。銃身に弾代わりの実を詰めて、思いっ切り突き出して飛距離を競って遊んだ。
杉の実を取る時にはしっかり花粉を浴びた。弾の滑りをよくするため、実を口に含んで湿らせてから詰めて発射した。時には誤って飲み込んだ。こうした遊びから自然に抗体ができ「花粉症知らず」になったと勝手に思っている。
一目で花粉症と分かる姿は減っているようでもあるが、それは見掛けだけという。予防法や治療薬、個人の対処法によって苦しそうでなくても、症状は変わらないらしい。
前に住んでいた所では、隣家に高さ20㍍もあろうかという杉の大木があった。黄色の花粉が風に吹かれ、帯状になって飛散していくのを下から眺めたこともある。その頃、花粉症のことは知らなかった。
真っすぐに成長する杉の木は、和風の建築には欠かせない貴重な資材である。
杉は人を苦しめているとは知らない。
(2019.04.18 中国新聞セレクト「ひといき」掲載)