はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

予期せぬこと

2020-07-02 12:52:00 | はがき随筆
 娘が車で仕事へ出掛ける朝は駐車場わきの桃の木の下に立つ。この時間帯、集団登校の通学路なので安全のためにいつものようにつっ立っていると、道路に向こう側から、ひらひらと1羽のチョウがやってくる。私が直立不動でいたからなのか、すかさず髪に止まり、頬、服へとと飛び移り、しまいには娘のフロントガラスの方へいき、羽根をばたつかせている。
 なんて人懐っこいチョウなの。後で調べてみると、ジャノメ科の仲間では。予期せぬ来訪に、私は花なんかじなゃないよと言う心境の数十秒間の出来事だった。
 宮崎県都城市 蔀なおこ(58) 2020/7/2 毎日新聞鹿児島版掲載

見舞い

2020-07-02 12:46:35 | はがき随筆
 進行がんで闘病していた元同僚が亡くなった。見舞いに行きたかったが、コロナ騒動もありかなわなかった。しかし、見舞いに行ったとしても、何と言葉を掛けたらよいのか、「頑張ってください」とでも、まさかである。
 それなら電話でもと思ったが、死の恐怖にさいなまれている人に何を伝えようというのか。励まし、いたわり、それとも……どうしても躊躇してしまう。
 結局何も出来なかったが、そのことを後悔している。彼は会いたかったかもしれない、辛い気持ちを聞いてほしかったかもしれない。
 熊本市北区 岡田政雄(72) 2020/7/1 毎日新聞鹿児島版掲載