はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

墨田の花火

2020-07-08 20:31:45 | はがき随筆
 梅雨本番、雨がアジサイの花を引き立てる。色や種類も多くなり、人の庭や道脇に咲いて、目を楽しませてくれる。 
 墓に行く道の土手でも見ごろになった。20年前、枝を1本貰い挿し木した。以降、もらった株や挿し木で増えた。
 その頃、友達の庭に白い珍しいのが咲いていた。「墨田の花火」の名が、かの夏の風物詩を連想させた。浴衣を着て一度だけ友達と行ったのを思い出した。
 色と名が気にいって枝をもらった。桃色の横に挿したのは薄桃色に、青色の隣のは淡い水色に色を変えて咲く。不思議がらせるが、それはそれで面白い。
 宮崎県串間市 武田ゆきえ(65) 2020/7/8  毎日新聞鹿児島版掲載

母の命日

2020-07-08 20:21:51 | はがき随筆
 平成17年6月23日、昼まで元気で近所の人たちと楽しくしていた母が、その夜、腹痛で苦しみ、次の日、80歳で天に召された。冠動脈の閉塞であった。
 それから15年、今回、妻が階段から転倒したが、救急車で病院に運ばれ、一命をとりとめた。その後4ヶ月、妻は2ヶ月間の入院生活から現在は我家で暮らしている。妻の70年の人生は、家族や孫のための献身的な生活であった。
 現在、家事はできないが、笑顔の中で平安を得ている。私は母の介護は一日もできなかったが、不自由な妻の姿に15年目の母の命日をおもいだした。
 熊本県大津町 小堀徳廣(72) 2020/7/7 毎日新聞鹿児島版掲載

むこ殿の心遣い

2020-07-08 20:14:03 | はがき随筆
 冷蔵庫が閉まらなくなった。なぜだろうと庫内をチェックするが分からず、娘に電話した。「ちょっと待ってて」と言われたが、ピーピーピーと異常な音が不安でならない。やがてマスクを着けたむこ殿が駆けつけてくれた。開閉する扉にちょっとした不具合があったらしく、すぐに直り、まずは一安心でした。我が家の冷蔵庫も後期高齢者になったようです。
 むこ殿が話すには「熱は測ってきました。36度2分です。なにかあったらまた来ます」と、蜜を避けるように帰っていった。優しい心遣いにありがたく感謝するのみでした。
 鹿児島市 竹之内美知子(86) 2020/7/6 毎日新聞鹿児島版掲載