はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ホテルに感謝

2020-10-02 11:47:35 | はがき随筆
 9月初めの台風10号は、気圧の低さから「いまだ経験したことのないレベル」といわれた。避難をと考えたが、「三密」になると思い、避難所に行くことがためらわれた。
 丸一日かけてようやくホテルの予約が取れ、風雨の中、たどり着いた。頑丈な建物とはいえ、吹き付ける風の音に眠れない。
 翌朝、青空を見た時はほっと胸をなでおろした。朝食会場では検温し、食事が終わるたび、テーブルクロスを掛け替えてくれる。感染予防の配慮に感謝だ。 
 思いもかけず「GOTOトラベル」の恩恵も。そこは高齢者の新たな避難場所だと痛感した。
 
宮崎市 河上久子(71) 2020/9/30 毎日新聞鹿児島版掲載

大阪なおみ選手

2020-10-02 11:36:27 | はがき随筆
 20年程前ニューヨークではガイドさんからアメリカでは単に白人対黒人としてだけでなく、人種により細かく階級と差別が在ると聞いたことがあった。
 昨年大阪選手が世界1位にランクされて日本中フィーバーした時、私はテニスは知らないので可愛い選手だなと思っただけだった。今年になって白人警官による黒人銃撃事件が相次いて起きた事に抗議して彼女は「アスリートであるより先に私は一人の黒人女性です」とコンメトし、黒人犠牲者の名を記したマスクを着けて試合に臨んだ。その勇気ある行動に敬服し、それと共に私の鈍感さを恥じた。
 熊本市中央区 増永陽(90) 2020/9/29 毎日新聞鹿児島版掲載

2020-10-02 11:26:31 | はがき随筆
 悲しみながら骨を拾うのではなく時間に追われながら骨を拾う、棺桶が列をなす都会の葬式に出席したときに都会で死ぬのは嫌だと痛切に思った。何か人の死ではなく事務仕事をお手伝いしているような感があった。
 田舎で死にたいと昨年郷に戻り腰を落ち着け暮らしてみる。戦死の叔父、寝たまま静かに逝った祖母。いまだに励まされる父の死と、若くがんで逝った悔しい姉の死。何故死ぬのか、死とは何なのか実は何も分からない。座禅を組んでも線香をともしても分からない。分からないまま死ぬのが嫌な自分がいるだけが救いだ。
 鹿児島県湧水町 近藤安則(66) 2020/9/28 毎日新聞鹿児島版掲載