はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

チャップリン

2021-04-12 11:52:24 | はがき随筆
 日めくりに最悪だという時は最悪でないと書いてある。まさにその通り。最悪は予告なしに矢のように飛んでくる。日暮れに玄関で足をすべらせ下駄箱でめがねが粉々になり、額が切れてポタポタ血が足元に。救急車で運ばれ目の上を7針縫うことになった。顔は青くはれてお岩さんになり、体はあちこち痛くなった。今では家の中でも杖をついている。コトコト杖の音で思い出した。昔友達と何度も見てまねをしていたモダンタイムス。思っただけで心が弾んで来た。雨に唄えばのタップもよかったなあ。杖でリズムを取ってみる。
 熊本県八代市 相場和子(94) 2021/4/3 毎日新聞鹿児島版掲載

近況と塩湯

2021-04-12 11:41:10 | はがき随筆
 ちょっとの不注意で愛車を傷つけ、以後運転禁止。米寿、叙勲などの後、油断大敵、好事魔多し。不自由な日々を嘆いています。でも電動自転車のお蔭でグラウンドゴルフや近くの温泉には通えます。この温泉はかつて赤湯と呼ばれた歴史ある古湯で、塩を含んでいます。肩こり腰痛神経痛など効能たっぷりで人々に親しまれています。この温泉では源泉を時間をかけて蒸発させ、塩を作っています。温泉から製塩の素晴らしいアイデアで、料理はもちろん自家風呂に入れ、自分専用の温泉にと役立っています。ちなみに塩の名は「富の塩」。こうご愛用。
 鹿児島県姶良市 宇都晃一(88) 2021/4/3 毎日新聞鹿児島版掲載

歩く楽しみ

2021-04-12 11:31:02 | はがき随筆
  めっきり足腰が弱る。家にこもって、街歩きも少ない。ふと「自転車なら、どこまでも行くぞ」と強がっていた親父を思い出した。膝関節を痛め、歩行は無理。自転車で買い出しにも出かけていたが。親父と同年になり、初めて味わう老いの苦しみなのかもしれないなあ。
 廃車した今、買い出しは歩くかバスに乗るかしかない。三密を避け、リュック姿で。昔は親父に叱られた。「困苦欠乏に耐えろ」が口癖。辛抱したよ。まだ親父よりは丈夫な歩きぶり。妻も「父さんを見習って頑張れ」と発破をかけるし。ヨタヨタ歩きはみっともないからなあ。
 宮崎市 原田靖(80) 2021/4/3 毎日新聞鹿児島版掲載

ダブルプレゼント

2021-04-12 11:21:52 | はがき随筆
 「どこかに紛れ込んでいたのか、手違いでお届けするのが遅れ、申し訳ありません」。1月下旬、旧友からの年賀状を手にした配達員が恐縮している。確かにスタンプは3.1.とある。肝心の最後の日はよく読めないけれど「どうぞ、ご心配なく」と言いながら受け取る。
 鳥のカービングが趣味で、今年のデザインはオシドリのつがい。八十路を超えてなお制作意欲に衰えを見せぬエネルギー。一方で、黙って郵便受けに入れておいて差支えないはずの配達員の誠実さにも改めて感動。はがき大好き人間には想定外のダブルプレゼントになった。
 熊本市東区 中村弘之(84) 2021/4/3 毎日新聞鹿児島版掲載

勘違い

2021-04-12 11:12:47 | はがき随筆
 私たちは好き好んでマスクをしている訳ではない。コロナの蔓延を防ぐために不便でも我慢している。コロナの死者数が少ないのを民度が高いと失言し顰蹙を買った大臣と、マスクはいつまでつけておくのかと他人事のように居丈高に記者団に質問したのは同一人物のようだ。医療従事者の功労、ステイホームに耐える国民の姿を理解しているとは思えない。
 そういえば、日本は単一民族と失言し会見した折「誤解があるなら訂正する」としきりに言っていたが、そもそも誤解があったのは本人だけで我々に誤解はない。勘違いも甚だしい。
 熊本市北区 西洋史(71) 2021/4/3 毎日新聞鹿児島版掲載の