はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆1月度入選

2010-02-23 17:11:35 | 受賞作品
 はがき随筆1月度の入選作品が決まりました。
▽出水市上知識町、年神貞子さん(73)の「日記」(7日)
▽同市上鯖渕、川頭和子さん(58)の 「雪の日に」(23日)
▽伊佐市大口上町、山室悟入さん(63)の「得度式」(12日)
-の3点です。

 一木法明さんの随筆(1月25日)に、所用で沖縄に行き「ひめゆり平和祈念資料館」での強烈な印象が、脳裏を離れないとありましたが、私も涙で正視できなかった経験があります。毎日の記事に、田中角栄氏が、戦争を知っている世代が指導者である間は、我が国は安全だと言ったとありましたが、ここ数代、戦争を知らない首相が続きます。沖縄も日本もどうなることでしょう。
 入選作を紹介します。
 年神さんの「日記」は、今年は曇天で初日の出は見られなかったが、元日の夜の満月の美しさに、一年の計を誓ったという文章です。内容の意外性とともに、張りつめた印象の残る文章です。
 川頭さんの「雪の日に」は、鹿児島の雪景色に、若いころ越後湯沢や蔵王にスキーに行った時の、温泉のにおいや玉コンニャクのおでんを思い出したという内容です。連想の妙のきいた文章です。まだお若いですから、また蔵王にでも。
 山室さんの「得度式」は、禅寺の得度式で、若い女性の剃髪の瞬間に立ち会った感慨がつづられています。剃髪前にパーマをかけたということですが、このようなまさしく人生に出会う瞬間はなかなかありません。
 次に数編紹介します。畠中大喜さんの「風呂たき」(5日)は、まきで風呂をたくと喜ばれた、子どもの時の記憶の中で、今でも冬場にはまきで沸かして楽しんでいる、という一時の至福の時間が書かれています。本山るみ子さんの「箱根駅伝を見る」(15日)は、箱根駅伝をドラマ化した映画の印象と、実際の駅伝の中継とを重ねて、学生たちの悲喜こもごもに思いをはせた文章です。
 高橋誠さんの「アルミの鍋」(22日)は、父親が戦後、工場で作った溶接された頑丈なアルミの鍋を、母親は捨てられないでいるという内容ですが、どこにもこういう「我が家の遺産」はありますね。吉井三男さんの「どっちもどっち」(3日)は、ご夫婦で物忘れ競争?)をなさっている様子が、軽妙に明るく描かれています。
(日本近代文学会評議員、鹿児島大名誉教授・石田忠彦) 

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