学生時代にバイクで日本一周をした。当時流行した歌に惹かれて。津軽海峡の思い出から。
7月初旬の大間発函館行き。夕日が寒々とした街並みを浮かび上がらせている。肩を寄せ合うように並ぶ家々の壁が日を照り返し、幻想的な気分に浸った。服を着こみ、雨合羽まで着たが寒い。誰もしゃべらない。船室で震えながら丸くなっていた。「北へ帰る人の群れは誰も無口で……」。寂しく切なく、一人旅の味をかみしめていた。エンジン音だけが響く船内で。2週間後、北海道から三厩港へ渡り、竜飛岬へ向かっていた。
歌に酔う北の大地の夏炉かな
鹿児島県霧島市 秋野三歩(63) 2020/4/25 毎日新聞鹿児島版掲載
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