娘の家族に会いたい一心で、この夏、モロッコに一人で出かけた。2年ぶりに会った孫娘、ナディアが「バーバ、ママは年2回は泣くよ」と言った。
娘が小学5年の時に夫が急死。公舎を引き揚げ、転校した先で、仲間はずれにされていると知った時のことを思い出した。悲しみと怒りで母娘抱き合って泣いた。彼女の背をなでながら何としても強い子に育てよう、もう泣くまいと決めた。
大学在学中のニュージーランドでのワーキングホリデー。長男が働いていたタイへの1人旅。大学卒業後は中国の大学へ留学。そこでモロッコの青年と知り合い結婚、と一人立ちの準備は万全だと思っていた。
「なぜ泣くの?」「だって、お母さんがそばにいないんだもの」「そうか……。私が来ればいいのね」「バーバ、来るの? バ゛ンザーイ」。パパの所へ走って行ったナディアが「パパもさんせいだって、よかったね」と大喜び。
娘は私が母の老後ほ見たように、自分も私を見たいという。「ありがとう」。涙を封じて34年。再び涙があふれ出てきた。私は土倉を望んでいる。大地に横たわり、静かに目を閉じる。深紅のバラを供えられた墓の下で、ゆっくとりアフリカの土になっていく姿を想像している。
鹿児島県阿久根市 別枝由井 2016/11/24 毎日新聞鹿児島版「女の気持」爛掲載
娘が小学5年の時に夫が急死。公舎を引き揚げ、転校した先で、仲間はずれにされていると知った時のことを思い出した。悲しみと怒りで母娘抱き合って泣いた。彼女の背をなでながら何としても強い子に育てよう、もう泣くまいと決めた。
大学在学中のニュージーランドでのワーキングホリデー。長男が働いていたタイへの1人旅。大学卒業後は中国の大学へ留学。そこでモロッコの青年と知り合い結婚、と一人立ちの準備は万全だと思っていた。
「なぜ泣くの?」「だって、お母さんがそばにいないんだもの」「そうか……。私が来ればいいのね」「バーバ、来るの? バ゛ンザーイ」。パパの所へ走って行ったナディアが「パパもさんせいだって、よかったね」と大喜び。
娘は私が母の老後ほ見たように、自分も私を見たいという。「ありがとう」。涙を封じて34年。再び涙があふれ出てきた。私は土倉を望んでいる。大地に横たわり、静かに目を閉じる。深紅のバラを供えられた墓の下で、ゆっくとりアフリカの土になっていく姿を想像している。
鹿児島県阿久根市 別枝由井 2016/11/24 毎日新聞鹿児島版「女の気持」爛掲載
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