はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆5月度

2015-06-25 12:08:48 | 受賞作品
 はがき随筆の5月度の入賞者は次の皆さんです。
【優秀作】17日「感謝」的場豊子(69)=阿久根市大川
【佳作】16日「見習わなくちゃ」奥吉志代子(66)=いちき串木野市上名
    21日「歴史の時効」高橋誠(64)=鹿児島市魚見町
 
 感謝 ショーウインドーに、母の姿が映っているのを見たと思ったが、実は自分の姿だった。それにしても、似たくない体形がよくここまで似ようとは。しかし健康な身体に産んでくれたことを、せめて生前の母に感謝したかったという内容です。母と娘の間に流れる微妙な心理が、軽妙な筆致で描かれています。
 見習わなくちゃ 帰省中の友人から自宅での夕食のお誘いがあった。終わって後片付けを手伝おうとすると、それは90歳の老母の仕事だと断られた。母親への、こういう形での思いやりを知らされることになりました。私たちの生活で厄介なのは日に数回の食事の準備ですが、そこに家族の姿があるようです。
 歴史の時効 熊本市での街づくり研究会に参加し、家並みの保存状態を問い合わせたところ、「火付け盗賊の薩賊」に焼かれてしまったという返事が返ってきた。鹿児島では、西郷隆盛を「火付け盗賊」と呼ぶことはまずないと思いますが、場所が変わると歴史の評価がまったく異なるという、興味深い経験でした。
 その他3編を紹介します。
 一木法明さんの「息子の結婚」は、40歳を過ぎた一人息子が親としては諦めていたのに、結婚を機に僧職を継いでくれた。その喜びが素直に表れている文章で、読む方も一安心した気持ちにしてくれます。
 萩原裕子さんの「鹿児島脱出」は、夫君の長年の介護などで今まで行けなかったが、東京での大学卒業記念の祝賀会に出席することにした。これを機会に前向きの生き方に変わればと願っているという内容です。
 有村好一さんの「小鳥と共に」は、庭の果実などがヒヨドリの鳥害にあった。最近は、居座って悪さをする渡り鳥が増え、子どものときのように、いろいろの小鳥の鳴き声を楽しむことが少なくなった。一読すると小鳥の思い出のようですが、その奥に、地球環境や生態系の変化を考えさせられる文章です。
 森園愛吉さん「はがき随筆大賞」受賞、高橋誠さん「文学賞」受賞、おめでとうございます。
 (鹿児島大学名誉教授・石田忠彦)

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