はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

「農を生きた友の苦境に」

2012-10-03 21:44:41 | 女の気持ち/男の気持ち
岩国市  会 員   吉岡 賢一

田地田畑のある農家の婿養子となった同級生のもとへ、半ば親切の押し売りみたいな形で稲刈りの手伝いに行ったのは去年の秋。

「今年も行こうか」と電話すると、「去年手伝ってもらった広いところは米作りをやめた。今年は家の前と後ろの小さな田んぼだけにしたから、手伝いは要らないよ」と言う。昨年までは2㌧ばかりの新米をJAに出荷してきたが、もう限界らしい。

老体にむち打って精出しても、先行投資した1000万円超の農機具の維持管理が難しい。しかも年々の必要経費高騰によって、米を作れば作るほど赤宇なのだというではないか。その上八十八の手間暇かける労力が要る。同級生の中では彼が一番痩せていて、苦労の跡が目に見える。

田や畑は作らなくても放っておくわけにはいかない。隣接する耕作中の田んぼに害を及ぼすので、草刈りや維持はしなくてはならない。しかも、一旦荒らすと復旧にまた大きな労力と資金が要る。苦労を数えりゃきりがない。大きな農家の婿養子になった彼を羨ましく思ったのも今や昔の物語。米作りこそ縮小したが農作業には追われる彼を、せいぜいカラオケに誘い出すくらいしか能がない。

それにしても食料自給率40%を割り込んだわが国の農業政策。外国からの兵糧攻めにあったらひとたまりもないのではないかと心配する。食糧他力本願からの脱却、急務である。

  (2012.10.03 毎日新聞「男の気持ち」掲載)

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お久しぶりです。 (yattaro-)
2012-10-03 23:14:44
先日は9月25日から1週間ばかり、ブログアップがなくて、あれこれ気をもんでおりました。
何かお加減でも悪かったのでしょうか。

と思っているうちに復活されました。一安心です。
そのとたんに、岩国エッセイサロンの面々が大変貴ブログを賑わせまして申し訳ありません。
いつもいつも大変お世話になります。
有難うございます。
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更新が遅れて… (アカショウビン)
2012-10-17 00:09:56
ちょっといろいろありまして…
遅れに遅れております。
もうしばらく、この状態が続きそうです。
ご心配かけました。
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