はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

「如意棒」

2011-12-09 15:49:40 | 岩国エッセイサロンより
2011年12月 9日 (金)

岩国市  会 員   山下 治子

朝から裏の山が騒がしい。柵を立て、網を巡らすも効果は薄い。今年は気温の変動でダイコンや白菜の成りが早い。それを狙って畑に来る。

畑の主のおばちゃんは85歳。サルの気配を心得ていて、この時ばかりは曲がった腰がピンと張り、立ち向かう。バケツをたたき、引き気味の私に「大丈夫。如意棒があるからね」と杖代わりの傘をパッと開いた。ワンタッチ傘だ。サルは突然開く傘に驚いて逃げるという。子を抱えた母ザルが素早くダイコンを抜いて逃げた。「子をだしにされたら仕方ないよね」。おばあゃんの目は優しかった。

     (2011.12.09 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩國エッセイサロンより転載

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