2015年12月 2日 (水)
岩国市 会 員 稲本 康代
たわわに実った柿を収穫したとき、全部取らずに一個だけ残しておく習わしがある。それを木守り柿という。来年もよく実りますようにとの願いが込められているのだとも、鳥たちへのお裾分けだとも言われている。
我が家の裏にも、いつ植えられたか誰も知らない富有柿が、一本ある。今年は数えきれないぐらい、たくさんの実をつけた。
が、今は木守りの一個だけである。
夕暮れ時、丸坊主になった柿の木のてっぺんに、小さくぽつんと赤い実が残っているのを、見上げていると、やがて訪れる厳しい冬を思う。
(2015.12.02 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載
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