はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

春の夜

2020-04-28 08:44:57 | はがき随筆
 ふと思い立ち、港へ車を走らせる。平日にもかかわらず立ち並ぶ人影。期待を胸に、間へ入れてもらった。久しぶりの夜釣り、竿振りミスは禁物と緊張感を持ち1投目、すぐに電気ウキが沈み込む。良型のサバだ。時間を忘れ、入れ食い状態を夢中で楽しんだ。肌寒さを感じ始めた頃、耳元で荒めの声がする。「こい食べんね」。驚き振り向くけば、黄金色の揚げ物がびっしり。お礼もそこそこにつまみとると「もっとふてのを取らんね」。奥様が作られた自慢のおやつを名も知らぬ仲間へ配り歩く。冷たいガネを頬張りながら、うららかな気分に包まれた。
 鹿児島県霧島市 橘翔士(38) 2020/4/20 毎日新聞鹿児島版掲載

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