はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆10月度

2016-12-10 12:57:38 | 受賞作品
はがき随筆10月度月間賞は次の皆さんでした。
 【優秀作】3日「駅長ニャン太郎」小向井一成=さつま町宮之城屋地
【佳作】5日「雨の音」山下秀雄=出水市西出水町
▽18日「スカイプ」下内幸一=鹿児島市紫原


「駅長ニャン太郎」は、聴覚障害の若い2人づれと、心の通う意思の疎通ができた喜びが書かれています。そのきっかけを作ったのは、肥薩線の古い駅の駅長に任命されている可愛らしい猫でした。はじめは躊躇していましたが、障害者だから会話はできないと思いこむのではなく、一歩を踏み出した結果が、暖かい文章になっています。
 「雨の音」 近くの学校の「水滴石をも穿つ」という垂れ幕は、日ごろのたゆみない努力の大事さを教えたものですが、そこから起こる連想が書かれています。大きな雨音からは、熊本の被災地の方々の苦労が、そこから被災者の日常の復帰への道のりへの同情、そして僅かな水滴が落ちるような日々をくり返すことのできる自分の幸福を今更のように感謝されています。
 「スカイプ」 この随筆ではお孫さんの可愛さがよく素材になりますが、今度はテレビ電話での2人のお孫さんとの会話です。文明の利器の利用には、拒絶される方も重宝される方も、それこそ人それぞれですが、離れた相手の顔を見ながら話ができる。それが当然のことのように私達の日常の生活に入り込んでいることには、軽い驚きを感じます。
 この他に3編を紹介します。
 有村好一さんの「立ち寄り湯」は、日当山温泉でスウェーデン人の青年に会うと、温泉が好きで指宿に行くという。自分の住んでいる街なので、方々を案内してあげたら喜んで帰って行ったという、心温まる内容です。
 高橋誠さんの「スペイン語辞典」は、毎日ペンクラブの勉強会の際、スペイン語辞書の忘れものがあり、スペイン語を勉強している奥さまに持ち主を探させようとしたら、偶然それは奥さまのものでした。
 野崎正昭さんの「からいも神様」は、なんとなくおろそかにされがちなサツマイモ礼賛の文章です。大飢饉のときも薩摩藩からは「からいも」のために餓死者は出なかったという。山川の徳光神社や千葉の昆陽神社など、いも神様は大事に祭られている。
  鹿児島大学名誉教授 石田忠彦

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