はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

友の死を今もいたむ

2010-06-08 10:58:10 | 岩国エッセイサロンより
2010年6月 3日 (木)

   岩国市  会 員   横山 恵子

 5月25日付広場欄の「水難救助には浮き袋を」を読み、小学校時代のつらい出来事を思い出した。

 近くの川で一緒に泳いでいたAちゃんが深みに入り、そばにいた私にしがみついた。それは想像だにしないものすごい力だった。私が潜ると手を離したので何とか助けることができた。

 おぼれる人の救助には、浮袋か長い棒が必要なことを身をもって知った出来事だった。

 夏休みには祖父母の住む田舎に泊まりに行った。近所のSちゃんが「明日は岩国のおばさんの家に行くんよ」とうれしそうに話してくれた。

 しかし、その2日後、Sちゃんは変わり果てた姿で帰ってきった。子どもたちだけで泳ぎに行きおぼれてしまったのだ。

 Sちゃんのおとうさんは連れて帰るタクシーの中、生き返るのではと、ずっと抱いておられた。その夜、私は祖父の後を思い足どりでついって行った。

 Sちゃんは、まるで眠っているようだった。お母さんは信じられないといった様子でSちゃんの頭や手をなで話しかけておられた。胸中を思うと今も心が痛む。

(2010.06.3 中国新聞「広場」掲載)岩国エッセイサロン花水木より転載

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