はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

「手 紙」

2012-03-30 12:03:35 | 岩国エッセイサロンより
2012年3月30日 (金)

   岩国市  会 員   樽本 久美

 大学生時代、下宿をした。大島のおばあちゃんはたいそう心配した。「久美が下宿してだいじょうぶかいね」と。いつも遊びにいくと、私の大好きなイモを食べさせてくれた。そのおばあちゃんに母がそっくりになってきて、私も母にそっくりである。
 その母が足を悪くして、家の中でもつえが放せない。たまに母の家にいくと「2階の部屋のあれをとってきて」と頼まれる。
 ある日、母の机の引き出しを開けると、たくさんの私からの手紙があった。下宿先から出した手紙や母の日のメッセージカードなど、よくもこんなものをと思うものまで捨てずにとってあった。
 大学生時代、母はよく小包を送ってくれた。そこには必ず「手紙」が添えてあった。母からの手紙には愛情が詰まっていた。思いやりが感じられた。残念ながら私は母になることができなかったが、その時の「おまもり」は今も持っている。
 結婚したら必ず母親になるとは限らない。子供のいない夫婦も多い。今まで何度も「お子さんは?」と聞かれた。何度も何度も嫌な思いをした。この年になってやっと聞かれなくなったけれど。
 「みくちゃん、元気ですか?」
 私の心の中の子供に手紙を書いてみた。
 今はたまに「みくちゃんあての手紙」を、私のノートに作成中。
   (2012.03.30 毎日新聞「女の気持ち」掲載)岩國エッセイサロンより転載

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