はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

「大工になった元同僚」

2013-11-09 14:39:50 | 岩国エッセイサロンより
2013年11月 9日 (土)

岩国市  会 員   片山 清勝

近くで棟上げがあった。棟梁は、大工仕事に魅了されて脱サラしたかつての同僚。建築を1から学ぶため大工に弟子入りし、学校にも通うこと6年。1級建築士の資格を得て、一人親方として独立した。
 家が寿命を迎えて解体された時、材料が土に返れる木の家を作ることに彼はこだわっている。そのため完成には手間も時間もかかるという。
 材木市場へ足を運び、納得した木材を購入し、自然乾燥させて使用する。準備した木に墨付けをし、ノコやノミ、カンナなど昔ながらの大工道具を使う。プレカットの普及にともない、最近は墨付け、刻みの仕事が少ない。これができて大工は一人前というこだわりも彼は持っている。 
 今回手がけた家も「軸組模型」を作り、刻んだ材を仮に組む「地組」をし、墨付けや刻みに齟齬のないことを確認したという。また、古民家から出た松などの古材丸太を使っている。その質感、あめ色の艶と重量感は白い新材を引きまとめる力強さがある。
 棟梁こだわりの家を見学した時のこと。玄関を入ったとき、新建材を使わない家に違和感を感じた。しかし玄関を出る時に、室内の空気の柔らかさからか、穏やかな気分になっていた。
 奥さんも元同僚。「よくここまでやってこれました」と棟の主人を見上げながら感慨深げに語る。二人の今日までを知っているだけに心からエールを送った。

  (2013.11.09 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
tatu_no_koさま ようこそ (アカショウビン)
2013-11-10 17:23:43
40代の棟梁とは、頼もしいですね。
これこそ、日本建築の素晴らしさを伝えてくださる、力強い棟梁殿です。
竣工までにいくら時間がかかっても、待つ甲斐があるというものでしょう。

今後に期待したいです。
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職人 (tatu_no_ko)
2013-11-10 08:07:09
転載ありがとうございます。
昔ながらの木材建築にこだわる棟梁、家の終わりが来たら土に返す、自然に返すことを貫いています。
40代の棟梁に期待している一人です。
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