はがき随筆・鹿児島

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「老」の経験や知恵生かそう

2012-10-07 23:43:07 | 岩国エッセイサロンより
2012年10月 4日 (木)
    岩国市  会 員    片山 清勝

 「老」の字について問うと大方の人が「年をとった人」と答えるという。超高齢化社会と称されるいま、そうかと納得もする。しかし大老や家老、老熟に老練、老舗などいくつもの老を含む味わいある日本語がある。

 「老」は多くのことに経験を積み巧みな技や知恵を持っていることを表している。そこには「敬う」という意味を感じる。かって家庭では、家事や育児などは父母から教わり、そこから和が生まれた。地域の伝統や行事は年長者から伝えられ、引き継がれた。そこに自然と絆が芽生え、育っていた。

 どうしてそれが薄くなったのか。核家族化が進み、情報はネットや書籍中心となり、経験者から学ぶ機会が失われた。情報化の進歩や多様化への対応困難さなども老の出番を減らした。老は増えたが、その蓄えた力の使い場が不足している。

 孤独死や老人介護など高齢者を取り巻く環境は厳しい。民間活動も合めこうした問題へ取り組みがされているが、改善策は容易には進まない。

 東日本大震災を機に大きなうねりとなった絆の復活。そこに高齢者の経験と知恵を引き出し活用し、「老」を単に「年をとった人」という単純なイメージから脱却できないか。

   (2012.10.04 朝日新聞「声」掲載)岩国エッセイサロンより転載

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