はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆6月度入選作品

2007-07-25 22:32:49 | 受賞作品
はがき随筆6月度の入選作品が決まりました。
▽鹿児島市紫原、高野幸祐さん(74)の「ブルーカナリア」(1日)

▽同市小原町、吉利万里子さん(60)の「半ドン」(3日)
▽鹿屋市札元、神田橋弘子さん(69)の「輝いて老いる」(9日)
の3点です。

 梅雨も明け夏本番ですね。6月は、さらりとした、さわやかな文章が出そろいました。
 高野さんは「ブルーカナリア」で若いころあこがれた女性の思い出を書きました。悶々とした自分を70歳を過ぎた今も変わらない性格と面白く表現しました。タイトルが面白いですね。
 吉利さんの「半ドン」は、子供のころの暦の土曜日のブルー表示を前日から楽しみに待つ弾んだ気分を、軽快に述べました。神田橋さんは「輝いて老いる」で、グラウンドゴルフにはまって15年、気心の通い合う仲間と快打で楽しむ毎日を愉快に表しました。
 多くの思い出の文章もいいですね。伊地知咲子さんの「忘れ得ぬ人」は、絵画、映像が浮かんできます。音も聞こえてきますよ。上村泉さんの「『海』の替え歌」(13日)を読んでわたしは、パロディ風の替え歌に親しんだ昭和を、懐かしく思いだしています。「鮎」(23日)は春田和美さんの友人で今は故人となったアユ釣り名人Kさんの思い出を描いた作品です。小村忍さんの「飛行場跡の思い出」(29日)は、幼時に爆弾の穴が残る飛行場近くに住んでいました。当時は食糧難の時代で、カライモのくず拾いをしたことが、父母の年忌のたびに悲しく思いだされます。川久保隼人さんは十島村の宝島での教職経験をもっとも懐かしい「思い出の宝島」(8日)としてまとめました。これら5編は、それぞれ生きた証として、いつまでも暮らしの栄養になっていくでしょう。
 「父の日」は「母の日」ほど話題になりません。小村豊一郎さんは人生のベテランらしく、さらりと作品「父の日」(26日)にまとめました。最後の<父の日も終わって元の粗大ゴミ>がいかにも面白いですね。
 いい文章は読む人に完全に伝わることです。
(日本文学協会会員、鹿児島女子短大名誉教授・吉井和子)
係から
入選作品のうち1編は28日午前8じ20分からMBC南日本ラジオで朗読されます。「二見いすずの土曜の朝は」のコーナー「朝のとっておき」です。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿