「暑い暑い」と口にするだけでも、心も体も焼けただれそうな日々だ。涼しいところに逃げ出したい気持ちだが、現実的にはそうもできない。ふと、人生前半を過ごした南阿蘇山麓での夏が懐かしく蘇る。
エアコン、扇風機など知りもせず、暑さしのぎは団扇だけ。涼風は家の中を吹き抜け、夜は蚊帳をつった床で母が孫たちを団扇であおいでくれていた。
家は明け放したまま。流水で冷やした野菜や西瓜の味。主人の転勤、子どもの進学で市内に住居を構え、暑さにへたばること50年にもなる。夏だけはあの田舎で過ごせたらいいなあ……。
熊本市中央区 原田初枝(89) 2019/8/28 毎日新聞鹿児島版掲載
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