はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

私の積み木

2009-07-11 18:41:14 | 女の気持ち/男の気持ち
 また、積み木をひとつずつ積み上げている。今度はどんな型に積み上げようかと迷いながら。せっかく積み上げても壊されてしまうけど……。
 この春、結婚してから8回目の引っ越しを済ませた。前回からわずか7ヵ月だった。前々回は夫が突然時期はずれの異動になり、私は急に仕事を辞めざるを得なかった。仕方がない。ずっと夫と一緒に回ると決めたのだから。
 こうして夫の転勤に伴って県内各地を回っていると、いろいろな土地に行ける楽しみはある。今まで住んだ町がニュースに出たりすると懐かしく思い出される。夫が退職したら、かつて住んだ場所を2人で訪ねる楽しみもある。でも、ここ数年は少々疲れ気味。
 せっかく新しい生活を築き上げても、どうせまた壊されてしまうと思うと虚しくなる。
 そんな私の耳に聞こえてくる「新しい土地での生活を楽しみなさい」「自分から積極的に入っていかないとダメよ」という声。私は強く耳をふさぎ、「分かってる。分かってる」と叫ぶ。
 夫の仕事上、私も今までその地域になじもうと精いっぱい頑張ってきた。もちろん楽しいこともいっぱいあった。今度の場所もとても心地のよさそうな町でホッとしている。
 でも、私はもう頑張りたくない。これからの積み木は、ひとつずつ、ひとつずつ、ゆっくりと私の好きな型に積み上げていきたい。
  鹿児島県中種子町 西田 光子・51歳 2009/7/10 の気持ち掲載

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