はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

「未来を信じて」

2011-04-28 17:44:51 | 岩国エッセイサロンより
2011年4月28日 (木)
岩国市  会 員   中村 美奈恵

就職活動中の大学4年の息子が私に聞く。「最近、心に残った新聞記事は何?」。先日受けた会社の面接でそう聞かれたという。私はその日の新聞を広げながら「これ」と指さした。「今だからこそ宝物は何ですか」。それは、東日本大震災で避難されている人たちが、自分の手元に残ったものの中から宝物を見せてくれる記事だ。
 
 86歳の女性は手作りの「手提げ袋」。私と同じ歳の女性は焼け残った「封筒」。子供たちを抱き寄せた42歳の男性は「家族」。理由を読みながら、手にした宝物が一人一人にとってどれほど大事かを考えた。息子は言う。
 「面接でこんな記事に感動しましたと答えると、だから、どうしたのかと問われる」
 私は言った。
 「人って元気なときばかりじゃないよね。何かがうまくいかないとき、気持ちが落ち込んでいるときに、こんな記事にあったら、自分も頑張らなきゃあって、また前を向いて歩き出すんじゃないかね」

 息子はうなずき、記事に見入った。「僕はこれが一番いい」。指さしたのは右手を胸に当てた84歳の男性の写真。 
 「妻にまだ会えないが、思い出はここに」

悲しみの中にあるだろう男性のほほ笑みが心を打つ。

就職活動する人たちにとって、今は最も大変な時期だ。不採用の通知、返送された履歴書に落ち込む息子。

未来を信じて頑張って。

  (2011.04.28 毎日新聞「女の気持ち」掲載)岩國エッセイサロンより転載

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お久しぶりです (金ちゃん)
2011-06-13 21:59:42
今、さかのぼって読んでいたら、ここにきてビックリ。ありがとうございます。
あの日の新聞と書いたときの気持ちを思い出しました。
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金ちゃん お久しぶり (アカショウビン)
2011-06-16 17:58:01
北九州はいらっしゃいましたか。

こちらは夫の記念会のために、今年は参加出来ませんでした。
またいつかお会いできますように…。
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こんにちは (金ちゃん)
2011-06-22 12:45:47
メールをしたいのですが、どうしたらいいでしょうか。
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ようこそ 金ちゃんさま (アカショウビン)
2011-06-22 18:14:21
メール待ってます。
ピアノ発表会頑張ってくださいね。
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