はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

サーファーの住む町

2008-11-29 16:24:25 | 女の気持ち/男の気持ち
 通り過ぎていく青年の姿をポカーンと見送った。あまりにも思いがけず私の前に現れたので、現実のものと了解するのにしばらく時間がかかった。
 10月の青空が広がるさわやかな昼前だった。太陽の光に誘われて自宅の門を出た時、右手の方から、片手にサーフボードを抱え、50㏄のバイクに乗った青年がスーッと目の前を通り過ぎて行った。青年の表情はとても楽しげだった。
 一瞬、映画を見ているような錯覚にとらわれた。でもすぐに映画のシーンではないことに気づく。今まで暮らしたどの町でも見られなかったこの光景が、普通に見られるという驚き。
 この町に暮らすようになってもうすぐ3ヶ月。引っ越す前に、種子島でもこの町にはサーファーに一番人気のある海岸があると聞いていた。ここに来てから4、5回海岸に行ったが、噂通りサーファーの姿がいつも見られ、なるほどと納得した。ただ、海で見かけるサーファーは自分たちとは別世界の人たちに見えた。でもバイクで通り過ぎて行った青年は、なぜか身近に感じられた。
 島の青年だろうか? サーフィンが好きで、島外から来て住み着いた青年だろうか? 勝手に想像してしまう。サトウキビ畑の向こうに広がる海を見ながら、自分は種子島で暮らしているんだと再確認する。
   鹿児島県西之表市 西田光子(50) 2008/11/29
   の気持ち 掲載
写真はparusさん

最新の画像もっと見る

コメントを投稿